医療モール開業

医療モールが注目され、増え続けている理由

医療モールが注目されている背景には、わが国の医療経済の問題、開業医の状況、そして、患者さんからの要望の3つの要素があげられます。この3つの視点から「医療モール」が注目され、増え続けているその「ワケ」を見てみます。

医療経済など社会の視点

逼迫するわが国の医療経済

国民一人ひとりが手厚い医療を受けるためには、その国の医療経済が健全でなければなりません。わが国の財政は、歳出が歳入(税収)を上回る状態が続いており、本来は歳出を抑えて歳入とのバランスを図らなければなりません。

しかし、わが国は高齢化による医療費の増大が続いており、歳出抑制に寄与していないのが現状です。そして、歳出に占める医療費の割合は、平成23年には37%であったものが、平成27年には41%を占めるに至っています。

国の歳出に占める医療費の割合

国の歳出に占める医療費の割合のイメージ
(「日本の財務関係資料・一般会計における歳出・歳入の状況」平成28年財務省、「国民医療費の動向」平成28年厚生労働省)

医療費の動向

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  23年度 24年度 25年度 26年度 27年度
医療費(兆円) 37.8 38.4 39.3 40.0 41.5
医療費の伸び率(%)
(参考:休日数等補正後)
3.1
(2.8)
1.7
(2.0)
2.2
(2.2)
1.8
(1.9)
3.8
(3.6)
一日当たり医療費の伸び率(%) 3.2 2.6 3.1 2.1 3.6
受診延日数の伸び率(%) ▲0.1 ▲0.9 ▲0.8 ▲0.3 0.2

(厚生労働省資料より作成)

医療行政は、病床数が多すぎると、不必要な入院が増え、高齢者医療費などが膨らむ要因になるとして、病床数の削減を打ち出しています。長い期間治療を要する慢性期の患者さんや、集中的な治療が必要のない患者さんは、在宅医療や介護施設に移ってもらう政策方針を掲げています。
中核病院は高度な医療技術を必要とする急性期の患者さんの治療に特化し、クリニックは、かかりつけ医としての役割を担う地域の医療分担システムを本格化しようとしています。

社会や時代の要求に応え、地域医療を担う「医療モール」

そうなれば、クリニックの機能はもちろん、在宅医療やリハビリテーション、介護など、さまざまな地域医療の充実が不可欠になります。
その地域で開業したいというだけでは、地域の医療を担うことは困難です。専門以外の医療については、周辺の医師と連携する、リハビリテーションのスキルを持った専門施設と提携する、介護が必要な患者さんにはケアマネジャーなどとの連絡を取るなど、包括的な医療活動が必要になってきます。

国は、団塊世代が75歳以上となる2025年(平成37年)を目途に、高齢者の尊厳を守り、自立した生活ができるように、地域の包括的な支援・サービスを提供する「地域包括ケアシステム」体制の構築を推進しています。
「医療モール」は複数の診療科と専門性の高い医師が集い、相互に連携して在宅診療を受けもち、介護施設、リハビリテーション施設とも手をつなぎ、これからますます重要度を増す地域医療を担うことができます。「医療モール」は、社会や時代の要求に応えることができる医療システムだからこそ、いま注目を集め、期待されているのです。

医師の視点

医師過剰時代になりつつある

これから開業しようとする医師にとっても「医療モール」はいわば期待の星です。我が国は少子高齢化の時代を迎え、人口が減少し続けていることから、患者さんの数も少なくなる傾向にあります。反面、医師の数は年々増え続け、人口10万人当たりの医師数も増加し続けているのです。
ちなみに、平成2年に人口10万人当たり医師の数が171.3人であったのに対して、26年には244.9人にもなっています。この数字を見ても、医師が過剰な時代になりつつあることが分かります。

医師数の推移

医師数の推移のイメージ
(厚生労働省資料より作成)

都市部の高齢者人口増加に対応する

そして、医師数の増加は、地方よりも東京、横浜、名古屋、大阪、福岡など大都市で顕著です。同時に高齢者もまた大都市で増加しています。将来的にも、都市部で生活する65歳以上の高齢者が2010年には約268万人であったものが、2040年には約412万人に達するという予測もあります(国立社会保障・人口問題研究所「日本の地域別将来推計人口」平成25年)。

高齢者特有の高血圧、糖尿病、高脂血症などの疾患と共に、介護が必要な患者さんに対応するためには医師だけでなく、薬剤師、介護士、ケアマネジャー、作業療法士、管理栄養士など、さまざまな分野のプロフェッショナルが連携しなくてはなりません。

いま、医療モールが都市部で開業しようとするドクターから注目されているのは、高齢者の増加に伴う都市部での医療機会の増加です。身近な専門医や多職種と連携しながら地域医療の担い手となることへの期待といえるでしょう。

集患、初期費用の軽減、ランニングコストの抑制が魅力

こうした状況では、開業したいと考えても、独立したクリニックを運営するのは大変な事業とならざるを得ません。開業すれば患者さんが集まり、収益も期待できる時代はもう過去のものです。優れたコンサルタントが事業計画を練り、資金調達を実行し、集患に携わり、診療報酬が上がらない時代に適応した経営の効率化を図ることが可能な「医療モール」は、開業を希望する医師を強力にサポートします。

実際、一般的な戸建ての開業と比較すると医療モール開業にはさまざまなメリットがあります。医療モールは比較的立地に恵まれることが多く、たとえば、商業施設に併設された医療モールでは、買い物帰りの地域の人が気軽に立ち寄れる、看板なども医療モール全体で目立つように掲げることができ認知度が高まるなどから、より多くの集患が期待できます。
あるいは、クリニックが入ることを前提とした施設では、内装などの初期費用の軽減や駐車場などを共有でき、ランニングコストを抑えることができるでしょう。

患者さんの視点

医療モールにはメリットが多い

内科、小児科、整形外科、皮膚科、泌尿器科、婦人科、耳鼻咽喉科、眼科など、多様な診療科目が集まる医療モールでは、専門的なスキルを持った医師が、患者さんの症状に合わせて適切に診察してくれるため、患者さんも「医療モール」に期待を寄せています。

医療モールでは、クリニック同士の連携が図られ、患者さんの医療データ共有などが可能で、しかも多診療科型クリニックでは、1枚の診察券で複数の診療科を受診できるので、効率的に診察が受けられます。 医療モール内で解決できない症例については、連携先の基幹病院に紹介し、スムーズに診察を受けることができます。地域の人たちにとって、医療モールは病診連携・診診連携の図られた、かかりつけ医の機能が集約された医療空間です。

急性期を過ぎたので退院してリハビリに通いたい。少し身体が弱ってきたので介護施設に入りたい。こうした多様な要望に応えることができるから、医療モールは地域住民の支持を得ているのです。「もっと医療モールを」それが患者さん、地域住民の願いです。

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