科目別/医院開業動向情報

眼科の医院開業動向情報

眼科クリニックの新規開業と生存戦略!失敗しないためのポイントとは?

眼科の医院開業動向情報のイメージ

「眼科を開業したいが、競合が多くて失敗しないか不安……」
「眼科の開業で押さえるべきポイントがわからない……」

このような不安を抱える眼科医の方は多いのではないでしょうか。この記事では、失敗しない眼科クリニックの開業の方法についてまとめました。

眼科クリニックの開業を失敗しないために、ぜひ参考にしてください。

眼科をとりまく動向

眼科の医院開業動向情報のイメージ2

厚生労働省の「令和2(2020)年医師・歯科医師・薬剤師統計の概況」(1)によると、眼科医は1万3,639人、医療施設に従事する医師全体の4.2%を占めています。そのうち、全国で診療所に従事する眼科医は8,612人で、診療所に従事する医師全体の8.0%を占め、内科医に次いで診療所で働く医師が多い診療科となっています。
また診療所で勤務する眼科医の平均年齢は58.3歳と、診療所の医師平均年齢60.2歳を若干下回っていることから、眼科は比較的若い年齢での開業が多いことが推察されます。
そして同調査では専門医を持つ医師の動向について、診療所に従事する眼科医8,612人のうち6,684人、約78%が眼科専門医資格を取得してると報告しています。競合に負けないためにも、眼科クリニックを開業する際はまず眼科専門医資格を取得しておくとよいでしょう。眼科専門医資格を取得していることで、専門性をアピールしやすくなります。

厚生労働省「令和2(2020)年医療施設(静態・動態)調査(確定数)・病院報告の概況」(2)によると、全国に眼科を標榜する診療所は8,244件、全体の8.0%を占めています。
眼科の診療所数が診療所で働く眼科医数とほぼ変わらないことから、多くの眼科医が1人で診療所を経営していると考えられます。

眼科クリニックの開業資金

眼科の医院開業動向情報のイメージ3

眼科クリニック開業を考えるうえで、初めに検討するべき問題は「資金」です。開業資金は「設備資金」と「運転資金」にわけることができます。

設備資金

設備資金の一例として、下記の項目が挙げられます。

眼科クリニック開業に必要な設備資金
  • 土地・建物購入費(または賃料)
  • 物件を借りる際の保証金
  • クリニックの内装費
  • 医療機器・設備・医薬品の購入費
  • 電子カルテ関連費用
  • オンライン予約システム関連

眼科クリニックを開業する際は、「患者さんにクリニックまで来院してもらう必要がある」ことを忘れてはいけません。
眼科診療に使用する多くの機械は据え付け型で、持ち運びには適していません。現代の高齢化社会でいくら国が在宅医療を推進していても、眼科医が往診・訪問診療をおこなうことは難しい状況です。 昨今ではコンパクト化した新しいタイプの眼科診療機器も開発されていますが、まだ臨床で普及していません。そのため、眼科クリニックを開業する際は、どのような年代の患者さんでも来院しやすい立地であることが重要になります。

また眼科に通院する患者さんの多くが「視力が悪い状態」であるため、院内設備にはいくつかの工夫が必要です。

  • 院内をバリアフリーにする
  • 院内の動線がわかりやすいように、床にテープを貼る
  • 介助者や家族が同伴しても狭く感じないような、広めの造りにする
  • 検査ごとに待合スペースを設ける 等

さらにクリニックの運営方針によっては、来院される患者さんのほとんどが高齢者になる可能性もあります。その場合は手すりを設置するなど、車椅子や杖でも不自由しないための配慮が必要です。

その他、眼科は明室検査室と暗室検査室の2種類の検査室を設置する必要があります。検査室は検査機器ごとに空間を十分取るようにし、患者さんが一つひとつの検査をスムーズに受けられるような動線の工夫が必要です。
また近年では患者さんのプライバシーに配慮し、診察室を個室としている施設も増えています。開業してから変更することは難しいため、個室にするかカーテンやパーテーションで仕切るかは、十分に検討しておきましょう。
加えて白内障手術や低侵襲、緑内障手術などの日帰り手術やレーザー治療をおこなう場合、手術室の併設も必須です。スペースをしっかりと確保し、患者さんが不自由に感じないような設計を心がけましょう。

眼圧計や眼底カメラ、静的視野計、スリットランプなど最低限揃えなければならない機器もいくつかあります。眼科の機器は他科と比べて高額になるものが多く、クリニックの規模によっては1つの機器を複数台購入する必要もあります。
また手術をするための設備投資は特に高額です。例えば、白内障手術機器一式だけでも数千万円はかかります。レーシックやレーザー治療など、手術目的や方法によっても必要な機器やスペースは変わってくるため、経営方針と予算に合わせて計画的に設備投資をおこなっていきましょう。

さらに、手術を診察と同日におこなうのか、手術のみの外来日を設定するのかで、院内のレイアウトや雇用する医師・看護師数も変わってきます。外来診療と同時に手術をおこなう場合は、自分以外に医師を雇用しなければ成り立ちません。一般外来診療を休診し手術専用外来日を設ければ、他の医師の雇用は不要です。

また手術をする場合には、前処置のための処置室や待合室・リカバリールームが複数必要になります。
手術をおこなわない、例えばコンタクトレンズの処方や視力矯正に特化する経営方針の場合、このような設備は不要です。
診療体制、診療時間、人件費やクリニック内のレイアウトに大きく影響するため、経営方針は開業コンサルタントとよく相談の上、決定しましょう。

運転資金

次に、運転資金としては、下記の項目が挙げられます。

眼科開業に必要な運転資金
  • 従業員給与/福利厚生費
  • 広告宣伝費
  • 薬剤費
  • 家賃
  • 医師会費用など

全国の「令和4年度 保険医療機関等の診療科別平均点数一覧表」(3)~(49)によると、眼科クリニックのレセプト(診療報酬明細書)の1件あたりの平均点数は1,016点となっており、内科のレセプト平均点数1,196点を下回っています。

社会保険診療報酬支払基金「統計月報(令和4年4月診療分)」(50)の統計によると、眼科の1件当たりの平均来院日数は1.1日で、1つの疾患に対し複数回の受診をする患者さんはあまり多くないことがわかります。初診患者さんの割合が多いため、結果として患者単価は高くなる傾向があります。
とはいえ、安定した経営を実現するためには初診患者さんだけでなく、花粉症やコンタクトレンズ処方のための視力検査などで、不定期に受診する患者さんのリピート率が重要です。

また眼科クリニックでは、受付スタッフ、看護師、視能訓練士(ORT)・眼科コメディカル(OMA)など多様な職種を雇用することが望ましいです。一日の患者数を増やすために重要なのは、視能訓練士・眼科コメディカルと連携した検査・診療の実施です。スムーズに検査・診察ができると、患者さんの在院時間が減り、回転率が上がり多くの患者さんを診察できます。

眼科クリニックの経営戦略に合わせた人材の雇用を検討しましょう。

眼科クリニックを開業する際の注意点

眼科の医院開業動向情報のイメージ4

眼科クリニック開業においては、競合相手がどこの地域にも存在します。

特に都市部、人口密集地、商業地域では競合が乱立していることも多いです。眼科医の歴史は古く、江戸時代にまで遡ることができ、どこの地域にも昔からの眼科クリニックが存在しています。そのようなクリニックは地元での信頼や人気も厚いため、強力なライバルになることは間違いないでしょう。
反対に過疎地域では競合する眼科クリニックは少なくなりますが、将来的にさらなる人口減少や高齢化による通院の困難が考えられるため、経営は難しくなるといえるでしょう。

眼科クリニックの開業で成功するためには、十分なマーケティングとターゲティングに基づいた、クリニックの経営方針を決めることが重要です。

眼科クリニックの経営方針

眼科の医院開業動向情報のイメージ5

眼科クリニック開業の経営方針は、以下のようなパターンが考えられます。

眼科における経営方針の一例
  • 一般的な総合眼科で開業する
  • 地域の総合病院や専門クリニックと連携する
  • コンタクトレンズ処方に特化する
  • 白内障等の日帰り手術に特化する
  • レーシックやICLなどの近視手術に特化する
  • 子供の眼の病気や視力矯正に特化する

さまざまな眼科クリニックが特色を打ち出し差別化を図ることで成功しています。地域のニーズを十分に把握し、競合相手の特徴を踏まえたうえで、自身の診療の軸を決めていくようにしましょう。

例えば専門的な手術や治療が必要な場合は、連携している総合病院や地域の専門クリニックに紹介する経営方針を取り、地域で眼科診療を分担して行くのも有効な戦略です。特に花粉症が流行する春先や、学校で検診がおこなわれる初夏には眼科の患者さんが増える傾向にあります。

また、開業当初はコンタクトレンズ外来に特化し、その後ニーズに合わせて施設を拡大していくことも検討できるでしょう。しかしニーズによって必要な機材・人材・施設面積が大きく異なるため、開業前に十分なターゲティングをおこない、経営方針を定めることが重要です。地域のニーズに合わせた経営方針を決めると経営も安定させやすい傾向にあります。

  • 繁華街や都市部など若い世代が多い地域ではコンタクトレンズ処方に力を入れる
  • 高齢者が多い地域では白内障や緑内障の手術、レーザー治療に特化する

このように地域のニーズに合わせた経営をおこない患者さんを増やすことで、眼科診療での経営が成功しやすくなります。

眼科クリニック開業において覚えておきたい戦略3つ

眼科の医院開業動向情報のイメージ6

眼科クリニック開業において覚えておきたい戦略は、以下の3つです。

  • 高額になりがちな設備投資の必要性を見極める
  • 競合相手に勝つためのマーケティング戦略
  • 地域の医療機関との連携

順番に解説していきます。

ポイント1:高額になりがちな設備投資の必要性を見極める

眼科クリニックでは開業戦略に基づいた設備投資が必要です。例えば同じ手術機器でも白内障の手術のみ可能な機器を導入するか、緑内障も可能な機器を導入するかによって、費用は大きく異なります。

数百〜数千万円単位の設備投資が必要となる眼科クリニックの開業においては、地域のニーズと経営戦略に合わせた設備投資の見極めが重要です。

ポイント2:競合に勝つためのマーケティング戦略

ライバルの多い眼科クリニックの開業では、特色をどのように出すかが重要です。厚生労働省の「令和2(2020)年受療行動調査(概数)の概況」 (51)では、医療機関にかかる時に「情報を入手している」人は外来患者の80.0%にのぼります。

その80.0%のうち「家族・知人・友人の口コミ」をもとに来院する患者さんは71.1%、「医療機関が発信するインターネットの情報」を情報源とする方は23.5%となっており、口コミもインターネットの情報もどちらも重要視しているといえます。

眼科クリニックのターゲットは子供から高齢者まで幅広い年代にわたります。特にコンタクトレンズ処方やレーシックをメインに開業する場合、大半の患者さんがインターネットの情報をもとに競合の眼科クリニックと比較・検討したうえで来院するでしょう。

一方、子供の視力低下や流行性角結膜炎・ものもらいなどの目の病気で受診する際は、インターネットの情報だけでなく地域での口コミも重要視する保護者が多くなります。

高齢者の場合は新聞や折り込みチラシ・ポスティングが効果的ですが、保護者と同じく口コミに影響を受けやすい年代です。

幅広い年代から集客をおこなうためには、ターゲットに訴求できるさまざまな方法での広告展開が必要です。

ポイント3:地域の医療機関との連携

眼科クリニックの経営において、地域の総合病院やクリニックとの連携は重要です。眼科診療をきっかけとして糖尿病や高血圧など、加療が必要な内科疾患が発覚する場合もありますし、合併症として眼科疾患を併発する場合もあります。地域の受け皿となる眼科クリニックとして、内科クリニックや病院との連携は積極的に図っていきましょう。

また眼科疾患で手術を希望される場合、合併症が多い患者さんは眼科クリニックでの対応が困難になるケースもあります。重症化するケースや対応が困難なケースの受け皿となる連携病院があることは患者さんの安心感にも繋がります。

競合相手の多い地域で生き残っていくためにも、地元で成功している他科の医師との連携は軽視できません。書面だけでなく直接挨拶に伺うなどして、開業当初から積極的に連携を図っていくようにしましょう。

まとめ

眼科の医院開業動向情報のイメージ7

競合が多い眼科では自身がやりたいことと、地域から求められていることを踏まえた経営方針の策定がより重要です。短期的な収益のみにとらわれず、地域の医療機関との連携も考慮して、継続的に地域から支持されるクリニックを目指しましょう。

開業に関して不明点があれば、ぜひフォームからお問い合わせください。

眼科の医院開業物件情報を見る

眼科の開業事例を見る

科目別/開業動向情報一覧へ戻る

参考URL
  • 厚生労働省「令和2(2020)年医師・歯科医師・薬剤師統計の概況」
  • 厚生労働省「令和2(2020)年医療施設(静態・動態)調査(確定数)・病院報告の概況」
  • 北海道厚生局「令和4年度 北海道内の保険医療機関等の診療科別平均点数一覧表」
  • 東北厚生局「2022年度 診療科別平均点数一覧表(青森県)」
  • 東北厚生局「2022年度 診療科別平均点数一覧表(岩手県)」
  • 東北厚生局「2022年度 診療科別平均点数一覧表(宮城県)」
  • 東北厚生局「2022年度 診療科別平均点数一覧表(秋田県)」
  • 東北厚生局「2022年度 診療科別平均点数一覧表(山形県)」
  • 東北厚生局「2022年度 診療科別平均点数一覧表(福島県)」
  • 関東信越厚生局「令和4年度 茨城県内の保険医療機関等の診療科別平均点数一覧表」
  • 関東信越厚生局「令和4年度 栃木県内の保険医療機関等の診療科別平均点数一覧表」
  • 関東信越厚生局「令和4年度 群馬県内の保険医療機関等の診療科別平均点数一覧表」
  • 関東信越厚生局「令和4年度 埼玉県内の保険医療機関等の診療科別平均点数一覧表」
  • 関東信越厚生局「令和4年度 千葉県内の保険医療機関等の診療科別平均点数一覧表」
  • 関東信越厚生局「令和4年度 東京都内の保険医療機関等の診療科別平均点数一覧表」
  • 関東信越厚生局「令和4年度 神奈川県内の保険医療機関等の診療科別平均点数一覧表」
  • 関東信越厚生局「令和4年度 新潟県内の保険医療機関等の診療科別平均点数一覧表」
  • 関東信越厚生局「令和4年度 山梨県内の保険医療機関等の診療科別平均点数一覧表」
  • 関東信越厚生局「令和4年度 長野県内の保険医療機関等の診療科別平均点数一覧表」
  • 東海北陸厚生局「令和4年度 富山県内の保険医療機関等の診療科別平均点数一覧表」
  • 東海北陸厚生局「令和4年度 石川県内の保険医療機関等の診療科別平均点数一覧表」
  • 東海北陸厚生局「令和4年度 岐阜県内の保険医療機関等の診療科別平均点数一覧表」
  • 東海北陸厚生局「令和4年度 静岡県内の保険医療機関等の診療科別平均点数一覧表」
  • 東海北陸厚生局「令和4年度 愛知県内の保険医療機関等の診療科別平均点数一覧表」
  • 東海北陸厚生局「令和4年度 三重県内の保険医療機関等の診療科別平均点数一覧表」
  • 近畿厚生局「令和4年度 福井県内の保険医療機関等の診療科別平均点数一覧表」
  • 近畿厚生局令和4年度 滋賀県内の保険医療機関等の診療科別平均点数一覧表」
  • 近畿厚生局「令和4年度 京都府内の保険医療機関等の診療科別平均点数一覧表」
  • 近畿厚生局「令和4年度 大阪府内の保険医療機関等の診療科別平均点数一覧表」
  • 近畿厚生局「令和4年度 兵庫県内の保険医療機関等の診療科別平均点数一覧表」
  • 近畿厚生局「令和4年度 奈良県内の保険医療機関等の診療科別平均点数一覧表」
  • 近畿厚生局「令和4年度 和歌山県内の保険医療機関等の診療科別平均点数一覧表」
  • 中国四国厚生局「令和4年度 鳥取県内の保険医療機関等の診療科別平均点数一覧表」
  • 中国四国厚生局「令和4年度 島根県内の保険医療機関等の診療科別平均点数一覧表」
  • 中国四国厚生局「令和4年度 岡山県内の保険医療機関等の診療科別平均点数一覧表」
  • 中国四国厚生局「令和4年度 広島県内の保険医療機関等の診療科別平均点数一覧表」
  • 中国四国厚生局「令和4年度 山口県内の保険医療機関等の診療科別平均点数一覧表」
  • 四国厚生局「令和4年度 徳島県内の保険医療機関等の診療科別平均点数一覧表」
  • 四国厚生局「令和4年度 香川県内の保険医療機関等の診療科別平均点数一覧表」
  • 四国厚生局「令和4年度 愛媛県内の保険医療機関等の診療科別平均点数一覧表」
  • 四国厚生局「令和4年度 高知県内の保険医療機関等の診療科別平均点数一覧表」
  • 九州厚生局「令和4年度 福岡県内の保険医療機関等の診療科別平均点数一覧表」
  • 九州厚生局「令和4年度 佐賀県内の保険医療機関等の診療科別平均点数一覧表」
  • 九州厚生局「令和4年度 長崎県内の保険医療機関等の診療科別平均点数一覧表」
  • 九州厚生局「令和4年度 熊本県内の保険医療機関等の診療科別平均点数一覧表」
  • 九州厚生局「令和4年度 大分県内の保険医療機関等の診療科別平均点数一覧表」
  • 九州厚生局「令和4年度 宮崎県内の保険医療機関等の診療科別平均点数一覧表」
  • 九州厚生局「令和4年度 鹿児島県内の保険医療機関等の診療科別平均点数一覧表」
  • 九州厚生局「令和4年度 沖縄県内の保険医療機関等の診療科別平均点数一覧表」
  • 社会保険診療報酬支払基金「統計月報(令和4年4月診療分)」
  • 厚生労働省「令和2(2020)年受療行動調査(概数)の概況」

開業ノウハウ