脳神経外科の医院開業動向情報
脳神経外科の開業で覚えておきたい戦略!失敗しないための注意点とは?
「脳神経外科で開業するには何が必要?」
「開業した後に失敗するかもしれない……」
このように悩みを抱えた脳神経外科医の方は多くいらっしゃいます。そこでこの記事では、脳神経外科クリニックの開業に成功するためのポイントや注意点についてまとめました。
これから脳神経外科で開業予定の方は、ぜひ参考にしてください。
脳神経外科をとりまく動向
厚生労働省「令和2(2020)年医師・歯科医師・薬剤師統計の概況」(1)によると、脳神経外科を主たる診療科にしている医師は7,349人で、医師全体(32万3,700人)の2.3%を占めています。また全国で診療所に従事する脳神経外科医は1,135人で診療所に従事する医師全体の1.1%です。
厚生労働省「令和2(2020)年医療施設(静態・動態)調査(確定数)・病院報告の概況」(2)によると、脳神経外科を標榜する診療所は全国に1,804施設、全体の1.8%です。単純計算で各都道府県に38施設ずつしかないということになり、他の科と比べて競合クリニックが少ない科といえます。ただし実際の診療においては整形外科や神経内科と競合する部分もあるため、しっかりと戦略を立てて経営をおこなう必要があります。
脳神経外科クリニックの開業資金
クリニック開業を考えるにあたり、まず問題となるのが資金面ではないでしょうか。開業資金は、「設備資金」と「運転資金」にわけられます。それぞれ解説していきます。
設備資金
設備資金の一例として、下記の項目が挙げられます。
- 脳神経外科クリニック開業に必要な設備資金
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- 土地・建物購入費(または賃料)
- 物件を借りる際の保証金
- クリニックの内装費
- 医療機器・設備・医薬品の購入費
- 電子カルテ関連費用
- オンライン予約システム関連費用
前述の通り、脳神経外科クリニック開業では、画像診断装置を持つか持たないかで設備資金が大きく異なります。画像診断装置を導入する場合は、開業にかかる初期費用の額が他の診療科目の約2~3倍になることもあります。投資額が1億円を超えることもあるため、立地や機器の選定など、より慎重に検討しなければなりません。
通常クリニックの面積は約25〜30坪程度であることが多いですが、CT・MRIを設置する場合は敷地面積をかなり広くする必要があるため、面積は約60~70坪以上となります。
近年は、画像診断専門のクリニックも増えてきているため、自分のクリニックからアクセスさえ良ければ、そこを活用するという選択肢もあります。
また開業形態についてもしっかり検討する必要があります。以下にそれぞれの開業形態のメリット・デメリットをまとめました。
横スクロールでご確認いただけます
開業形態 | メリット | デメリット | 設備資金 |
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戸建てクリニックで開業 |
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購入の場合は、高くなりやすい 賃貸の場合は、物件次第 |
ビル診療所で開業 |
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購入の場合は、高くなりやすい 賃貸の場合は、物件次第 |
第三者から承継したクリニックで開業 |
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購入の場合は、高くなりやすい 賃貸の場合は、物件次第 |
運転資金
次に、運転資金としては、下記の項目が挙げられます。
- 脳神経外科クリニック開業に必要な運転資金
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- 従業員給与/福利厚生費
- 広告宣伝費
- 薬剤費
- 家賃
- 医師会費用など
採用するスタッフは、基本的には受付、看護師の2つの職種で問題ありませんが、状況によっては、診療放射線技師や理学療法士・作業療法士・言語聴覚士などのリハビリスタッフを採用したほうが診療の幅が広がり売上の増加に繋がる場合もあります。
例えば画像診断装置画像撮影機器のメンテナンス料は高額のため、そのコストを上回る診療報酬が見込めるのであれば、診療放射線技師の採用を検討してみてもいいかもしれません。ただし最初はなるべく軽装開業をして成功させるのが一般的です。
また運動器リハビリテーションについても脳神経外科の収益にできます。リハビリテーションを実施するには理学療法士・作業療法士・言語聴覚士などのリハビリスタッフを採用する必要があるため人件費は高くなりますが、リハビリをおこなうことで患者さんの満足度を向上させ、売上に繋げることも可能です。さらに「通所リハビリ(介護保険適用)」を実施することもできるようになるため、リハビリで通院する患者さんが増えればさらなる売上向上が期待できます。
脳神経外科は競合医院が少なく、広範囲からの来院が見込まれるため、広告展開のエリアは広めに設定して、若年層から高齢者層まで幅広い年齢層を集患できるようにしましょう。
CTやMRIなどの医療機器を導入している場合は近隣病医院との連携も重要になります。
脳神経外科クリニックの開業戦略3選
脳神経外科クリニックの開業戦略としては、以下の3つが挙げられます。
- 病診連携・診診連携の強化
- 地域の基幹病院と連携し、手術を実施
- 頭痛外来の開設
戦略1:病診連携・診診連携の強化
地域にある他の病院や診療所と連携することは非常に重要です。連携を強化しておくことによって、診療ステージにあった患者さん(例えば急性期を去った脳梗塞患者さん)をご紹介いただくケースもあります。病診連携、診診連携はマーケティング費をかけない集患に繋がるのです。
紹介された患者さんは紹介元へ返し、検査結果や診療情報などを紹介元の医師に丁寧に報告することで、紹介件数を増やすこともできます。他にも連携先との定期的な実績報告会や合同症例検討会を開催し、クリニックの診療機能を認知してもらう活動をおこなうと、より集患が望めるでしょう。
戦略2:地域の基幹病院と連携し、手術を実施
地域の基幹病院と連携し、基幹病院の手術室とスタッフを借りて自院の患者さんの手術を実施して診療体制を強化することも今後重要になっていくでしょう。
クリニックは患者さんの手術を実施することができ、基幹病院は院内で手術をすることで診療点数に結びつき、患者さんは病院の手術室で手術をおこなうという安心感を持つことができます。クリニック・基幹病院・患者さんの3者にメリットが生まれるため、このような病診連携は積極的に構築していくとよいでしょう。
戦略3:頭痛外来の開設
片頭痛や群発頭痛、緊張性頭痛など、さまざまな頭痛を適切に診断し、処方・服薬指導をおこなうことで、多くの集患が見込めます。この戦略はMRIなどの装備を持たなくても収益を増やすことが可能で、実際に片頭痛に力を入れた「頭痛外来」を前面に打ち出すことで売上を伸ばし、成功を収めたクリニックもあります。
頭痛に悩む患者さんの数は多い傾向にあるため、診療を増やすことで病院に通う人も増えるでしょう。
脳神経外科クリニック開業時に注意したい3つのポイント
実際に開業するときに注意したいポイントは、以下の3つです。
- CT・MRIを導入するかしないか
- 余裕を持ったレイアウトとバリアフリー化された内装
- 照明や音に配慮する
それぞれ解説していきます。
ポイント1:CT・MRIを導入するかしないか
脳神経外科の開業の最大のポイントは、CT・MRIを設置するかどうかです。これらの画像診断装置を導入するかどうかで、投資費用やクリニックの敷地面積、開業戦略が大きく変わります。
CT・MRIといった画像診断ができることは競合と比較してとても優位性があるため、患者さんが多く見込まれるようであれば導入するとよいでしょう。
導入しない場合はその分開業初期費を抑えることができます。
ポイント2:余裕を持ったレイアウトとバリアフリー化された内装
車椅子や歩行補助器具で来院する患者さんも多いため、段差を無くしスロープを付ける、エレベーターを設置するなどのバリアフリー化を進めたり、通路や待合スペースに余裕を持たせたり等、患者さんの利便性を考慮する必要があります。
脳神経外科と合わせてリハビリテーション科も標榜する場合、しびれや麻痺の症状に対する運動療法や、家事動作などのADL訓練、言語訓練や嚥下訓練などをおこなうスペースもそれぞれ必要となります。広めの物件を選び、余裕を持ったレイアウトを実現しましょう。
ポイント3:照明や音に配慮する
脳神経外科に来院する患者さんの中にはめまいや片頭痛を持っている方もいらっしゃいます。強い光や大きな音は余計な刺激を与えることになりかねません。
強い照明を避けて自然光が差し込む物件にしたり、大きな音で音楽をかけないようにしたり、患者さんがなるべく快適に過ごせるように配慮しましょう。
まとめ
脳神経外科の開業は他の診療科の開業より規模が大きくなるため、より緻密な戦略を練る必要があります。
対応できる病状や患者さんなどを具体的にイメージしたうえで、病院の運営にかかる費用を想定しておきましょう。開業前の失敗を避けるため、病院の経営をしっかりとプランに落とし込むことが重要です。
経営戦略のポイントをおさえたうえで、自らの主導で医療連携に取り組み、緻密な戦略と具体的な経営のイメージを作ることで、脳神経外科クリニック開業を成功させましょう。開業に関して不明点があれば、ぜひフォームからお問い合わせください。
- 参考URL
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- 厚生労働省 「令和2(2020)年医師・歯科医師・薬剤師統計の概況」
- 厚生労働省 「令和2(2020)年医療施設(静態・動態)調査(確定数)・病院報告の概況」