開業医は儲からない?診療科別の年収や儲かるクリニックの特徴を解説
「開業医は儲からない?」
開業に興味がある一方で、このような疑問を感じる医師の方がいるのではないしょうか。
結論からいうと、開業医は勤務医に比べて高い年収が示されています。しかし、診療科によって平均年収は異なります。
本記事では、診療科ごとの開業医の平均年収や患者さんに選ばれ続け、盛業するクリニックの特徴について解説していきます。
目次
開業医と勤務医の年収の違い
厚生労働省の「第21回医療経済実態調査」では勤務医の平均年収が約1,488万円とされています。
一方で、開業医の平均年収は約2,748万円です。このことから、開業医は勤務医の約1.8倍の収入になることがデータで示されています。
その理由として、勤務医は基本的に固定の「給与」を受け取るのに対し、開業医は事業所得となるため、経営の成果に応じて収入が変動し、経営が成功すれば年収が上がりやすくなるからです。
各診療科における開業医の平均年収
診療科によって開業医の平均年収はさまざまです。以下の診療科ごとに平均年収を解説します。
- 小児科
- 整形外科
- 皮膚科
- 精神科
- 内科
- 外科
- 耳鼻いんこう科
- 産婦人科
- 眼科
小児科
小児科の平均年収は約3,068万円です。外来診療のほか、予防接種や乳幼児健診、幼稚園・学校の集団検診など、保険診療以外の売上比率が高い診療科といえます。
小児科は、子どもを連れた家族から口コミが広がりやすい傾向にあります。良い口コミが広がれば集患につながり、経営が軌道に乗りやすくなるでしょう。
整形外科
整形外科の平均年収は約2,988万円です。少子高齢化が進む現代において、整形外科では運動機能のリハビリが必要な高齢者が特に増加しています。
また、高齢者以外にもスポーツなどで怪我をした学生や先天性股関節脱臼の乳幼児など、幅広い年齢層の患者さんが想定されます。
皮膚科
皮膚科の平均年収は約2,709万円です。皮膚科は診察に要する時間が短く、人件費が抑えられるため、利益率が高くなりやすい傾向があります。
特に美容皮膚科と併設しているクリニックの場合、自由診療の提案がしやすくなるため、売上の確保につながる可能性が高くなるでしょう。
精神科
精神科の平均年収は約2,587万円です。ストレス社会である現代では、うつ病などのメンタルヘルスの治療に対するニーズが高まっています。
また、他の診療科に比べて高額な医療機器などの初期投資を抑えられるでしょう。
内科
内科の平均年収は約2,424万円です。競合クリニックが多くなるため、差別化が重要です。
開業地の特性(患者さんの年齢層や医療ニーズなど)を見極め、経営理念や診療方針医療機器、設備などで独自性を打ち出していきましょう。
耳鼻いんこう科
耳鼻いんこう科の平均年収は約1,890万円です。耳鼻いんこう科は、子どもから高齢者まで幅広い患者層がターゲットになります。また、花粉症の時期などは増患が見込めます。
さらに、少子高齢化が進む日本においては、高齢の患者さんの増加が予想されるでしょう。とはいえ、医療機器などで高額な設備投資が必要になるケースがあるため、資金繰りに注意が必要です。
産婦人科
産婦人科の平均年収は約1,834万円です。
分娩をやっているか否かで平均年収が大きく変わるとされています。昨今、不妊治療が保険診療になったため、不妊治療を行う場合は、投資が高額になる場合もありますが、今後は患者さんの増加が期待できる診療科といえるでしょう。
眼科
眼科の平均年収は約1,511万円です。白内障などの手術をおこなうか否かで設備投資の金額が変わり、平均収入が変動するとされています。
パソコンやスマートフォンの普及により、今後は眼精疲労や近視などで悩む患者さんの増加が予想されます。
経営が不安定になりやすい開業医の特徴
経営が不安定になりやすい開業医の特徴として、以下の5つが挙げられます。それぞれについて対策とあわせて解説していきます。
- 経営理念・診療方針が定まっていない
- 地域の患者さんのニーズが把握できていない
- スタッフの教育・育成ができていない
- 経営スキルが欠けている
- スタッフと連携がとれていない
経営理念・診療方針が定まっていない
クリニックの経営理念・診療方針が定まっていない場合、患者さんに提供する医療の質が維持できず、満足度低下につながる可能性があります。また、クリニックとしての成長が見込めず、患者さんやスタッフが離れていくケースも考えられます。
経営理念・診療方針を立てる際のコツは、院長自身の過去の経験を洗い出してみることです。医師としてのモチベーションの源泉や価値観を見つめ直し、患者さんに対してどのように貢献していきたいかを考えてみましょう。
そのうえでクリニックがどのように発展し、患者さんへ医療を提供していくか、明確なビジョンを決めることが大切です。
地域の患者さんのニーズが把握できていない
地域の患者さんのニーズに沿った診療ができていない場合、リピートされず、経営を安定させるのが難しくなるでしょう。たとえば、車移動が必須な地域であるにも関わらず駐車場が少ない場合、不便だという理由から患者さんが減少するおそれがあります。
また、待合室や診察室などが狭く居心地が悪いと、クリニックに対する満足度が下がってしまうかもしれません。
対策として大切なのは、患者さんの声に耳を傾けることです。来院する患者さんにアンケートを実施したり、直接話を聞いたりしてクリニックに対して不満がないかを確認しましょう。もし設備に問題がある場合は、増設や改築をおこない、患者さんのニーズに応えることが大切です。
スタッフの教育・育成ができていない
クリニック内でスタッフに対する教育・育成ができていない場合、患者さんの満足度が低下し、収益減少につながる可能性があります。たとえば、看護師の採血する技術が低いと、患者さんが痛がってクレームに発展するケースがあります。その結果、クリニックの評判が落ち、経営が不安定になるでしょう。
対策としては、定期的に臨床勉強会や研修会を実施することです。スタッフの医療知識・技術を高めるために、クリニック内で学びの場を設けましょう。正しい知識・スキルをもって患者さんに対して適切な対応ができれば、クリニックの評判が上がり、収益アップにつながります。
経営スキルが欠けている
集患対策を含むクリニックの宣伝や医療機器の選定などの経営スキルが不足すると、売上が安定しなくなる可能性があります。どれだけ豊富な医療知識や技術をもっていても、アピールできる手段がなければ、必要な患者さんに情報が届かないからです。
対策としては、同じようなクリニックの規模・診療科・地域性をもち、患者さんが多い競合のクリニックを分析することです。クリニックのWEBサイトや口コミ、診療内容や外観などを分析し、自院で取り入れられそうな要素を吸収しましょう。
スタッフと連携がとれていない
医師や看護師、医療事務などのスタッフ間で連携がとれないと、患者さんに対して質の高い医療が提供できなくなり、満足度の低下につながります。
クリニックに来院する患者さんは、スムーズかつ丁寧な治療を受けたいと考えています。スタッフ間で連携がとれず、患者さんに対してずさんな対応をしてしまうと、リピートされなくなるでしょう。
対策としては月に1度院内でミーティングを実施し、前月の振り返りをおこなうとともに、毎月の目標を決めることです。たとえば、以下のような目標を立てるとよいでしょう。
- スタッフへの申し送り事項をていねいに共有する
- 患者さんが受付を終えてから診察するまでの時間を短縮する
- 患者さんに明るい笑顔で対応する
スタッフとうまく連携し、患者さんに対して質の高い医療を提供できれば、収益アップにつながります。
開業医がクリニック経営を成功させるポイント
クリニック経営を成功させるためには、以下4つのポイントが挙げられます。
- 患者さんの来院が見込める場所で開業する
- 優秀なスタッフを採用する
- 他のクリニックと差別化を図る
- 提供できるサービスを増やす
患者さんの来院が見込める場所で開業する
開業時に、ターゲットとなる患者さんの来院が見込める場所を選ぶと、患者さんがクリニックを受診しやすくなります。たとえば、駅が近い場所や街中などの場合、交通の便が良いため、患者さんが治療を受けやすくなります。
希望の開業場所が見つかったら、診療圏調査を実施し、1日あたりどのぐらいの患者数が見込まれるかを分析しておきましょう。
あわせて競合となる医療機関を把握しておくと、クリニックの差別化を図る際に役立つため、おすすめです。
優秀なスタッフを採用する
優秀なスタッフを採用すると、患者さんに提供する医療の質が上がり、クリニックに対する満足度が向上します。
スタッフを採用する際は、医療従事者としての知識や技術、コミュニケーションスキルが問題ないかを見極める必要があります。
医療従事者としてのこれまでのキャリアを確認しながら、クリニックの経営方針やビジョンに共感できるかを確認しておきましょう。また、受け答えの仕方やコミュニケーションの取りやすさ、人柄の良さなどを中心に評価していくことをおすすめします。
他のクリニックと差別化を図る
クリニックの数は年々増加傾向にあり、その中で患者さんに選ばれ続けるためには、他のクリニックとの差別化が必要です。
競合クリニックでは実施しておらず、かつ地域の患者さんの治療ニーズを満たせる特色を作り出していくとよいでしょう。
たとえば、患者さんの要望に合わせて以下のような特徴の追加が想定されます。
- CT撮影ができる
- レーザー治療を受けられる
- 血液検査に力を入れている
- 舌下免疫療法が受けられる
上記の特徴をWEBサイトやSNS、待合室や看板などで周知し、自院の強みを押し出していきましょう。
提供できるサービスを増やす
患者さんのニーズに沿って提供できるサービスを増やすと、患者さんの来院数がアップし、売上の向上につながります。たとえば、オンライン診療や訪問診療などに対応すると、クリニックに来院するのが難しい患者さんに対して医療が提供できるようになります。
また、患者さんの待ち時間短縮のためにキャッシュレス決済を採用したり、診療予約システムや問診システムを導入したりするのもおすすめです。
大切なのは、患者さんの悩みやニーズに耳を傾け、解決に向けて医療を提供することです。
開業医の年収に関するよくある質問
開業医の年収に関して、よくある質問として「地方と都市部年収に違いは出ますか?」「成功する開業医の特徴は」という内容について解説します。
地方と都市部で年収に違いは出ますか?
都市部よりも地方の開業医のほうが年収が高い傾向にあります。地方の場合、病院やクリニックの数が不足し、特定の医療機関に患者さんが集中しやすくなるケースがあるためです。
また、地方で開業する場合、土地代・建築費・人件費などのコストを抑えやすく、利益を確保しやすいのが特徴です。一方で、都市部の場合は競合クリニックが数多くあります。数ある医療機関のなかから自院を選んでもらうためには工夫が必要です。
他院と比べて差別化できるポイントがないと、収益アップが困難になるケースがあるでしょう。
成功する開業医の特徴は?
クリニック経営を成功に導く開業医には以下の特徴があります。
- 患者さんのニーズを的確に把握し、それに沿った診療ができている
- 優れたシステムや医療機器を導入し、業務効率化ができている
- 高い経営スキルをもってクリニック運営ができている
- 周りの競合クリニックと比べて差別化となる強みがある
- 医師とスタッフの関係性が良好であり、円滑に業務が進行できている
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まとめ
厚生労働省のデータによると開業医は勤務医に比べて年収が高くなることが示されています。平均年収は診療科によってさまざまですが、経営の成果によっては高収入が見込めます。しかし、経営が不安定になりやすい開業医もいます。その理由としては、経営理念の不確立、地域ニーズの把握不足、スタッフ教育の不足などが挙げられます。
開業医が経営を成功させるためには、患者ニーズの把握、システム導入、経営スキルの向上、スタッフとの関係構築、他院との差別化を図ることが重要です。
■参考情報
- 厚生労働省 中央社会保険医療協議会 第21回医療経済実態調査(医療機関等調査)報告
https://www.mhlw.go.jp/bunya/iryouhoken/database/zenpan/jittaityousa/dl/21_houkoku_iryoukikan.pdf - 厚生労働省 中央社会保険医療協議会 第22回医療経済実態調査(医療機関等調査)報告
https://www.mhlw.go.jp/bunya/iryouhoken/database/zenpan/jittaityousa/dl/22_houkoku_iryoukikan.pdf - 厚生労働省 令和3(2021)年 医療施設(動態)調査・病院報告の概況
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/iryosd/21/dl/11gaikyou03.pdf