山梨大学医学部附属病院の研修ゲンバ

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※下記掲載内容は、2017年6月現在の情報です。

原田 大希 先生(救急部 指導医)

原田 大希 先生(救急科 指導医)

東京都出身、平成20年山梨大学卒業。初期研修はたすきがけプログラムで、1年目を東京の中野総合病院、2年目を山梨大学病院にて研修し、3年目以降は救急部に所属。5、6年目は千葉の成田赤十字病院の救命救急センターと形成外科で勤務し、形成外科では傷をきれいに治せる救急医になるべく研修。7年目~10年目は山梨大学病院救急科で勤務。

山梨大学医学部附属病院の特徴(特に救急に関して)をお聞かせください。

山梨県の人口80万人に対して、救命センターは山梨県立中央病院にある1つのみで、救急機能の充実が求められていたところ、11年前に現在の教授が赴任し、新しい救急科の基礎ができました。以来、救急科は臨床研修との相乗効果を生みながら発展してきました。


地域の2次救急の輪番を担うのは、国立大学病院としては初めてのことでした。2次救急の輪番によって、研修医は大学では診る機会の少なくなりがちな、Common Disease に多く触れることができるようになりました。また、山梨大学の学生がアルバイトで、検体を持っていく、薬を取りにいくといった、2次救急のサポート活動を行うようになりました。


山梨大学は、県内唯一の医育機関として、医学生、研修医、そしてその後とシームレスにつづいていくものととらえていますが、学生による2次救急のサポート活動もそれにマッチしたいいシステムだと思います。実際に医学生にとっても、救急の現場を知るいい機会になっているようです。サポーターバイトは毎年募集を上回る希望者がいて、このサポーターでの経験をきっかけに、大学病院での研修を希望してくれる人もいて、嬉しいですね。


当院の救急科では、「全員が主治医」として、救急科に所属する全ての医師が全ての患者さんを担当しています。土日も当番制にしていて、基本的には当番の医師が対応します。もちろん、学年の下の者が当番の時には、「分からないことがあったらいつでも連絡していいよ」と言っていますし、医局用の携帯電話で困ったときは指示を仰げるようなバックアップ体制があります。患者さんやその家族にとって、常に一人の先生から病状説明を受けて、強い信頼関係が生まれるのもとてもいいことですが、逆に、私たちは、「この服を着ている人は全員主治医ですから、何か困ったことがあればいつでも誰を捕まえてもらってもかまいません」というスタンスで、それはそれで心強いのではないかと思っています。また、われわれにとってという話をするならば、このシステムによって、休みの日だけど午前中は患者さんの顔を見に行って...というわけではなく、完全な休日をとることができています。旅行に行きたければ、是非行っておいで! 帰ってきたらお土産話を聞かせてね、というスタンスです。オンオフはハッキリしていると思います。しっかり休めるから、しっかり働けるんだと思っています。

山梨大学医学部附属病院の初期臨床研修(特に救急に関して)の特徴をお聞かせください。

やはり、大学病院でありながら2次救急の輪番をしている、というのが大きな特徴だと思います。新臨床研修制度のマッチングが始まり、大学病院か市中病院か選べるようになると、圧倒的に市中病院の人気が高かったんですね。大学病院は、地域の病院から紹介状を持って受診するような、いわゆるCommon Disease ではない患者さんばかり、研修医は雑用をさせられる、といったイメージもありました。

そういったこともきっかけで2次の輪番に参加するようになり、さらに研修医がその前面に立ち、医学生がサポートスタッフとして入り、他にもさまざまな人が救急の現場に参加する、という大学病院ならではの体制を構築しました。患者さんに直接相対する研修医の後ろには救急医がいますし、さらにその後ろには全ての科の当直医がいます。実際に医療を行う者として、こんなに心強いことはありません。


一方で、医師としての専門や今後の進路を定めるには、Common Disease だけでなく、さらに専門的な深いところを自分の目で見て経験する必要があります。いくら頭で考えても、実際に経験してみないと、一歩踏み込もうという感覚は出てこないと思います。


このように大学病院のいいところや市中病院に求めるところもある程度、経験できますし、医師として、その先の働き方を考えたときに、全ての選択肢を持った状態で2年間を過ごせます。それが当院での初期研修の特徴だと思います。もちろん、初期研修を市中病院で行い、3年目以降は医局に所属して大学院に行って博士号を取るのもいいでしょうし、極論をいえば、私自身は市中病院か大学病院か、というのに大きな違いはないと思っているんです。本当はこの場で言うことではないのかもしれませんが...

ご自身の研修はいかがでしたか。

新臨床研修制度が始まっていたので、市中病院という選択肢もあったのですが、大学6年の夏までずっと野球に打ち込んでいたこともあって、そのまま出身大学での研修を決めました。大学病院について世間一般でうわさされていることも気にはなりましたが、入局すれば大学医局という後ろ盾ができることにも魅力を感じていました。


たすきがけプログラムであれば市中病院と大学病院のどちらも経験できると思い、1年目は東京の中野総合病院で研修しました。今振り返っても、充実した楽しい1年でした。市中病院は大学病院と比べれば、当然ながら医師の数も限られてきます。「研修医にいろいろなことをやらせてくれる」というのは、いいことのように思えますが、反面、「こんなことも研修医1人でやるのか!」ということでもあります。1年間で確実に度胸がつきましたね。


進路については、学生時代から救急に興味を持っていて、医師になったからには全身を診られるようになりたいと強く思っていました。ありきたりかもしれませんが、道を歩いていたり、飛行機の中だったりで、どんな具合の悪い人を前にしても「医師です」と自信をもって名乗れるようになりたいじゃないですか。

指導医として大切にされていることはなんでしょうか。

研修医も人それぞれですから、付き合いながら、それぞれに合ったアプローチをしていきたいと思っていますが、誰でも、初期研修を終えて3年目には1人で患者さんに相対することになりますから、どんな状況でも困らないために、どう教えればいいかをいつも考えています。


研修医には、「困ったことがあれば絶対に相談に乗るし、いつでも呼んでくれてかまわないから、とにかく一人で行ってきて」、と言っています。状況によって研修医を見守る距離は変わりますが、研修医のしていることに対して、その場で事細かに指示することはないようにしています。患者さんも相手が研修医だというのは分かりますから、正直に、「今、私はあなたのおっしゃったことについて、経験不足で明確な回答ができませんが、責任を持って上のものに伝えます」というのを、勇気を持って堂々と言えるのも一つのスキルです。うまくその場を取り持つことができるような人になってほしいなと思いながら接しています。

研修医に「これだけは言いたい」ということは。

できるようになるためには経験が必要です。本で得る知識も確かに一つの小さな経験であって、それによってできることもありますが、自分が同じような場面に遭遇し経験したからこそ、どう立ち振る舞えばいいのか分かることもあります。1年目の医師よりも10年目の医師の方ができることが多い、というのはそういうことです。だからこそ、いろいろな経験を積むべきですし、そこに貪欲になってほしいと思います。そして常に、経験したものをすぐに取り出せる引き出しにしまっておいてほしいです。


経験というのは、病院の中での医師としての経験だけでなく、今までの人生だったり人と人とのコミュニケーションだったりも大事な経験です。

例えば、2次救急の輪番で一人の若い人が熱を出して受診したとします。さあ、どうしますか。「熱も高くて辛そうなので、まず採血して・・・」という研修医に対して、「採血って必要?」と問いかけると分からなくなってしまいます。もちろん、血液検査をすれば炎症の値が高いと分かりますが、その検査結果があってもなくても、内服薬を処方して家で様子を見てもらうという方針は変わらないんですよ。「今までの人生で、熱が出て病院を受診したことがあると思うけど、採血されたことってある?」と聞いてみると初めて理解してくれます。自分の中の“採血する/しない”のものさしは、はじめ10段階評価だったものが、経験によって、100段階、1000段階と、だんだん細かく設定されるようになってゆくのだと思いますが、でもこの場合は、「今までの人生の中で採血されたことはありますか」、「自分が受診した患者さんだったとしたら採血されると思いますか」、「いや、思わないです」、これでいいじゃないですか。


研修医の時期は特に、医師としていろいろなことを学びたい、という思いに駆られている時期ですから、何時まででも仕事をしていたいと思う人もいるかもしれません。だからといって、早く仕事を切り上げて外に飲みに行くのも、遊びに行くのも、医師としてのスキルアップにならないかといったら、そうではないと思います。リフレッシュという意味を越えて、日常の経験がヒントになることがあります。医師になったからといって、医療のことだけから学びたい、というのは少し違うかなと。


また、当院には1800人くらいの職員がいるのですが、やっぱりその1800人とコミュニケーションをとってほしいんです。清掃をされている方、看護師、薬剤師、事務職員も含め、会う人会う人としっかり挨拶をしてほしい。自分の上司には挨拶するけれど看護師とすれちがっても挨拶しないとか、それではいけません。いろんな人と話さなければならないのが医師という仕事です。いろんな人と接していろんなことを感じることで得られるものがたくさんあります。医師として働き始めると、いろんな人と円滑にコミュニケーションを取れることで、自分がどれだけ仕事をやりやすくなるのか実感すると思います。当然ながら、医師だけでは診療は成り立ちませんし、周りには看護師さんも、薬剤師さんたち、理学療法士さんもいます。その他にも、病院はいろんな距離感でいろんな職種があってこそ成り立っていますから、常に謙虚な心で、どんな人とも良好なコミュニケーションをとってほしいと思います。


他方で、「自分は医師である」、という明確な意識を持っているべきです。それが自信にもつながりますし、3年目になったら、1人で患者さんと相対しなければいけないタイミングがきます。今、目の前に、とんでもなく重症な患者さんがいたとして、あなたの他に百戦錬磨の看護師さんが大勢いたとしても、あなたが決断しなければ、この患者さんを救うことはできないんです。病院には、医師でなくては決められないことがたくさんあります。だからこそ、そういう立場にいるんだということを研修医のうちから自覚していてほしいと思います。 いろいろ言いましたが、「謙虚な心」と、「自分は医師であるという意識や責任感」のバランスが大切です。

これから初期臨床研修病院を選ぶ医学生へメッセージをお願いします。

とにかくいろいろ見て、いいなと思ったところに決めてください、という一言に尽きます。 いろんなところを見て、大学病院であっても市中病院であっても、どんな病院であっても、ちょっといいな、と気になるところがあれば見学に行ってみて、そこがピンときたのであれば、目標にすえてマッチング対策を頑張ればいいと思います。

大学病院だから研修医が雑用しかしないか、と言ったらそうではありませんし、当然ながら、「あなたが判断しなかったらこの患者さんは救えない」、という局面があります。市中病院で働くことを選んだ場合に、いろいろやらせてくれるし、大学病院に比べて雑用をしなくていい、ということではないんですね。自分がやるのがベストだというタイミングはあります。


どのような病院に行ったとしても、「自分がどういう医師になりたいのか」、「自分がどういう経験をしたいのか」、「それをどう自分の引き出しにしまっていくか」、という明確なビジョンがあれば、どういう病院でも同じように働けるはずなんです。市中病院だから、大学病院だから、ということではありません。


いろんなものを見て、いろいろ真面目に考えれば考えるほど、ここいいな、というのは見えてくるはずです。本人の価値観や感性も関わってきますから、とにかく、自分のこれは! という感覚に正直に従ってもらえればいいのでは、と思います。そんな中で、今この文章を読んでいる人たちの中から、当院で研修を受けようと思い、仲間になってくれる人がいたら嬉しいですね。もちろん大ウェルカムです。責任を持って、医師としてのスタートを支えてあげたいと思います。

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