オーダーメイド転職支援/事例3
医業継承を見据えた転職
病院の総合メディカルが推進する「オーダーメイド転職支援」その特徴と事例について、転職支援コンサルタントのH氏に話を訊いた。
今回は最終回である。
総合メディカルは、医療機器のリースやレンタルを主軸として創業し、その後、勤務医の開業を支援するコンサルティング事業や、調剤薬局の経営にも乗り出した。薬局の店舗数は全国に570を超え、ネット通販解禁以降は、医薬品の多角販売にも責任ある立場で力を注いでいる。
こうした理由により、開業を夢見る医師達からの転職相談も多い。勤務医として忙しい日々を送りながらの開業準備は、困難を極めるからだ。最終回となる今回は、医業継承を見据えた転職相談にまつわるエピソードについて訊いてみた。
医業継承
Y医師は40代、麻酔科の専門医だった。夫人もまた麻酔専門医であり、別々の病院に勤務していた。
夫人の実家はF病院を経営する医療法人。夫人に兄弟や姉妹はなく一人っ子だったため、Y医師にとって義父にあたるF病院理事長、つまり夫人の父親は、いずれ娘夫婦に病院を継いでもらいたいと考えていた。両親ともに医者ではなかったY医師なので、自身の実家を継ぐ義務はない。Y医師がDtoDに登録したのは、夫婦でF病院の事業を引き継ぐ決意を固めた直後のことだった。
転科の決意
「F病院は文字通りの中小民間病院で、これといった特徴を持ち合わせていません。救急を標榜しているわけでもないし、麻酔科の専門医が2人も入ったところで、診療面でどのように貢献すればよいのか見当もつきません。そこで妻と話し合い、私が転科することに決めたのです」
コンサルタントH氏との最初の面談で、Y医師は包み隠さず事情を話してくれた。奥様はどうされるのかと訊ねたところ「妻は当分の間、今の病院に勤務医として働き続けることとしました。家と職場、夫婦して四六時中同じ屋根の下にいるのもどうか、という話になりましてね!」Y医師は冗談を交え、明るく答えてくれたのだった。
総合メディカルによる診療圏調査の結果、競合や市場の将来性から見てF病院には整形外科を作るべきであろう、との結論に至った。
Y医師の再出発を支援するため、整形外科の臨床研修を引き受けてくれる病院探しが始まった。しかし、Y医師は実績ある麻酔専門医。大学に再び入局し若い研修医たちと肩を並べることは、さすがに躊躇われる。今回もまた、病院選定は困難を極めた。
研修医を育てながら自らも学ぶ
今回の転職は、Y医師の研修だけを目的としては成功しない。Y医師を必要としてくれる病院であることが大前提でなければならないのだ。コンサルタントH氏は明確な理念を持ち、病院探しに奔走した。
ほどなくして、コンサルタントH氏は民間のK病院にターゲットを絞った。同院は200床を超える大病院。診療科も多岐に渡り、協力型として臨床研修病院の指定を受けている。無論救急も標榜しており、手術もこなす。病院としての機能が充実しており、医師たちは日々多忙を極めていた。麻酔科の専門医であるY医師を必要とする可能性は極めて高いだろう。コンサルタントH氏はそう確信した。
「Y先生には、週に2日麻酔医として手術に立ち会っていただき、2日は整形外科の専門医と一緒に外来と入院を診てください。焦らず、少しずつで構いませんよ。加えて残りの時間を使い、プログラムに沿って行われる若い研修医たちの、外科的分野における指導をお願いしたいと思います」K病院の院長は面談の席で、Y医師に優しい眼差しを向けつつそう語ってくれた。
周知の通り、麻酔科医は不足している。Y医師のキャリアが大いに役立つことは明らかだった。その上、若い医師たちに指導するというやりがいを感じながら整形外科の研修も受けられるという、病院と医師、双方にとっての好環境が出来上がった。無論、これまで研修医の指導に当たってきた医師達の負担軽減にもつながる。病院と医師双方にとって最良のタイアップが、ここに成立したのである。
- オーダーメイド転職の本質
- インタビューの締め括りに相応しいエピソードであった。
今回、コンサルタントH氏が掲げた理念にこそ、オーダーメイド転職の本質がある。転職を希望する医師・受け入れる病院ともにメリットがあり、将来的なことももちろん見据える。上記事例のようにキャリアを持つ専門医を、整形外科の研修医として受け容れる病院は滅多に見つかるものではない。まして今回の場合、Y医師は遠からずF病院の経営を引き継ぐために退職するのだ。だがコンサルタントH氏は、K病院がY医師を求める要素を、緻密な分析により見つけ出した。これなくして今回の転職は成立しなかったと、断言してやぶさかでない。
「初回でもお話した通り、病院と医師両方にご満足いただかなければ、当社が紹介する意味はありません。また今回の事例でもおわかりのように、当社の強みはコンサルティングを備えた総合力です。医師紹介事業のDtoDコンシェルジュにおいても、社名に偽りなく総合力で勝負します」コンサルタントH氏は力強い言葉で結んでくれた。
- ここがオーダーメイド
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- それまでの経歴を活かすだけでなく、ゼロからのキャリアを積むための転職も検討できる。
- 転職者だけでなく、受け入れる医療機関にとってもメリットとなる転職を実現できた。
オーダーメイド転職支援とは、先生のご希望に沿った転職を実現するために
「医療機関に雇用の提案」を行うサービスです。