失敗しない医師転職手順~医師求人・募集情報の見極め~
失敗しない医師転職手順
医師が転職を成功させるために、医師転職の際に気を付けるべきポイントをまとめました。転職を検討する全てのドクターに役立つ情報です。医師の転職に必要なことをしっかり確認しましょう。 この記事はDtoDコンシェルジュで医師の転職をサポートするコンサルタントが監修しています。
医師の世界でも転職は極めて“普通のこと”になりました。「勤務条件が過酷過ぎる」「将来の出産や子育てを考えたい」「自分の思うような医療をしたい」など理由は人それぞれですが、およそ30代半ば~50代頃をターニングポイントとして、キャリアを見つめ直し、転職を考える医師が増えています。 医師の有効求人倍率は近年の医学部卒業者の増加により微減したものの、募集に対し約5~6倍で推移。売り手市場の状態が続いていることも転職への追い風と言えそうです。とはいえ、求人数の多さはそれだけ取捨選択が必要になるということ。転職を成功させるためには、いくつか押さえておくべきポイントがあります。
ポイント1 : 条件の優先度を決める
転職先の判断材料としては、収入をはじめ勤務地、当直のあり/なし、勤務の内容、病院の運営方針、一緒に働くスタッフとの人間関係……といくつもの要素があります。 しかし残念ながら、すべての条件が完全に理想通りという転職先は存在しません。「絶対に譲れないこと」と「できれば叶えたいこと」とをしっかりと見極め、優先順位をつけることが非常に大切です。
ポイント2 : 市況のトレンドを押さえておく
少子高齢化の進行によって国の医療政策の重点が治療から予防へと移っていく中で、社会が求める医師像にも変化が生じています。例えば、訪問診療医や健診・産業医の求人、リハビリ領域や介護施設での求人増加などが最近の傾向の一例として挙げられます。 また、技術よりもまず人柄を重視するという医療機関も多くなっています。
ポイント3: 転職の段取りを知っておく
現在の職場とのトラブルを避け、スムーズな転職を実現するには段取りが大切になります。 転職活動の期間は半年~1年程度が多く、「今年度末まで」など現在の職場と退職の話し合いをしてから転職活動を始めるのが一般的です。 最も多い年度末は3月であり、このタイミングでの退職を見越した転職の場合には、夏前から準備を進めることがおすすめです。
目次
1. 医師が転職を検討するとき最初に考えるべきこと
医師が転職する際に、まずどのようなことを考えておくべきでしょうか? より良い転職とするために、最初に知っておきたいポイントをまとめました。
1-1. 転職の主な原因となる6つの理由
転職をするにあたって何より大事になるのは、その転職の動機、理由です。医師が転職を考える理由は多くの場合、次の6つのタイプに分けられます。
01. より多くの収入を得たい
医師に限らず、転職の動機として多いものは収入面、年収です。他の医師の給与を知ったことをきっかけに、より高い収入を望んで転職をする医師は多いです。
02. 収入を抑えても、勤務時間を減らしたい/勤務地を選びたい
「頻繁に転勤があるために家族と過ごす時間が持てない」ことは、多くの医師が転職を考えるきっかけとなっています。同様に、「激務続きで仕事以外に何もできない」「今の働き方では子育てと両立できない」「両親の介護のために実家の近くで勤務したい」などの理由で、転職を希望する医師も近年増えています。
03. 特定のスキルを磨きたい
「将来の開業のために総合診療の経験を積める病院に移りたい」という場合のほか、現在の勤務先では専門医の取得ができないため、取得できる病院に移るというパターンです。
04. スキルを活かした診療を行いたい
40~50代の医師に多い理由です。ワーク・ライフ・バランスを配慮しつつ、身につけたスキルを活かして働ける場所への移動を望む医師は増えています。
05. 人間関係に疲れてしまった
職場の人間関係は、医師に限らずどんな職場でも転職理由の1つです。どのような職場であってもソリが合わないという人も中にはいるものの、「現在の職場でのストレスから解放されたい」といった事情で転職という方法が最もよい場合があります。
06. 医局や病院の方針と合わない、理想の医療を提供したい
経験を積み自分の診療スタイルができあがってきた30~40代の医師に多い転職理由です。ここから開業への道を選ぶ方もいます。
1-2. 転職理由に見る「譲れない条件」から転職先を考える
転職理由を考えてその優先度を決めておくことがなぜ大事なのかと言えば、これにより「転職において何を優先すべきか」がまったく変わってくるからです。転職理由がしっかりしていれば、「絶対に譲れない条件」を確実に押さえることができるので、「転職したもののこんなはずじゃなかった……」という事態を避けることができます。 医師の転職先と、そのおおまかな特徴をまとめると以下のようになります。
市中病院
一般的に大学病院より高い報酬が期待でき、異動等が少なく、生活基盤を落ち着けられること、地域医療に取り組めるなどのメリットがあります。病院の規模にもよりますが、診療科が大学病院ほど細分化されていないため専門領域に特化するより、総合的な診療を求められることが多いです。
クリニックや診療所
地域の医療の窓口という立ち位置なので、これも専門領域というよりは総合医としての診断や予防の部分での活躍が期待されます。当直や休日出勤がほとんどなく、休みもしっかり確保したい方に人気です。
介護老人保健施設などの高齢者向け施設
近年需要が拡大している分野です。総合医の需要が中心ですが、医療スキルだけではなく、特に患者さんやそのご家族をはじめとする入所者さんと、しっかりとコミュニケーションが取れるスキルが求められます。また、老人保健施設の施設長は、定年などで一線を引いた医師、またはQOL重視の医師が就くことも多いポストです。病院や患者さんのニーズにあわせて、さまざまな働き方があるといえるでしょう。
企業の産業医
産業医は企業の社員の健康診断や、過重労働者面談の実施や改善の提案を行う医師のことです。労働基準監督署が企業に対して選任を指導しているため、近年では需要が特に高まっています。企業においてメンタルヘルスに対しての配慮を行う産業医に対しては、高度な医療技術よりも、健康診断や過重労働者面談の実施、改善の提案といった労働者や周りのスタッフとのコミュニケーション力を必要とされます。そのため、第一線での職務に比べれば、出産や子育てなどでブランクがあっても就きやすいという特徴があります。また、会社員となるので総じて待遇は良く、労働時間や休みなど福利厚生も整っていることもひとつのメリットです。
これらに加え、働き方として常勤・非常勤の違いもあります。 非常勤医となるメリットは、何より時間の自由がきくこと。週休2~3日などの予定を組むことができますし、勤務時間が決まっているため、家事や子育てをしながらでも勤務しやすいことです。一方でデメリットとしては、社会保険や福利厚生の対象外となってしまうこと、他の医師との接触の場が少なく、最新の医療情報に触れる機会が少ないことなどがあげられます。転職の理由によっては、勤務先だけでなく働き方を見直すことも大事になってくるでしょう。
1-3. 転職の際に見落としがちなリスク
転職というと、収入アップや勤務環境の改善などメリットばかりに目がいきがちですが、当然ながら気をつけなければいけない点もあります。特に気を付けなければならないのは次の2点です。
専門的なスキルよりも総合的な診療
まず見落としがちなのは、大学病院及びその傘下の医療機関と市中の民間病院との機能の違いです。大学病院では高度で専門的な医療が中心ですが、市中病院はその手前の部分で総合的な診療を担っているのが一般的です。診療科目も大学病院ほど細分化されておらず、特定の専門領域での高度なスキルよりは、内科全般、外科全般というように全体を診ることが求められます。その中で、どのように自分のスキルを活かしていくかをイメージするのはなかなか難しく、働く前のイメージと働き出してからの実際の職場とにギャップを感じることもあります。加えて各病院には独自のシステムがあるので、慣れるまではそれらに戸惑うことも多いでしょう。
条件面よりも働きやすい環境
また、もう一つ気をつけなければいけないのは、数値としては見えづらい条件の問題です。 報酬額や当直勤務のある/なし、勤務地などははっきり書面にも記載されますからわかりやすいですが、例えば内部の人間関係や病院の雰囲気、将来性などは目で見ることができません。そこを確認せずに書面にある条件だけで決めてしまったりすると、「こんなはずじゃなかった」という結果になることもあります。
1-4. 医師の転職市況動向
上記のような注意点はあるものの、医師の転職市況全体としては活性化しています。 きっかけはいろいろありますが、その最も大きな原因は2004年に導入された新臨床研修制度でしょう。周知の通り、この制度の導入によりそれまではほぼ大学病院で行われていた研修医の研修が、市中病院で行われるようになりました。 その結果、医局に所属しないままで市中病院に勤務する医師が増え、以前に比べれば入局する医師が大幅に減少しました。
所属医師が足りなくなった医局では、これまで医師を派遣していた傘下の病院から医師を引き上げさせたため、人材確保の必要性にかられた各病院が独自に求人を出し始めた……という流れの中で、転職エージェント(コンサルタント)をはじめとする医師の転職サービスが活躍します。 その結果、求人情報の情報収集が容易になり、さらに転職がしやすくなるという流れが生まれてきました。
また、2012年に向け閣議決定された「病床再編」も転職市況の活性化に貢献しています。 病床再編とは、患者7人に対して看護師1人が常時勤務する「7対1」の病床数を減らすことを目的にした政策です。 「7対1」の病院では比較的手術数が多いため、現在務める病院が「7対1」ではなくなりそうだが臨床の経験を積みたいという医師にとっては、この病床再編の実施が転職を考えるきっかけとなることがあります。
更に2018年から運用が開始される「新専門医制度」により、既に専門医資格を持つ医師であっても専門医の更新が必要となります。 専門医が認められる要件を満たすことは大学病院などの大規模病院でないと比較的難しく、新制度下では大規模病院で臨床にあたりたいというニーズが高まると考えられます。
2. 医師転職のキャリアプランについて
医師としてどのようなキャリアを築いていくかを考える上で、最も重要なポイントは「自分が何をしたいのか」「何を目的として働くのか」を考えることです。 具体的に年代や待遇などを踏まえ、自分がどのようなキャリアパスを描きたいのかを考えてみましょう。
2-1. 一般的な医師のキャリアプランとは
一般的な医師のキャリアパスを見てみると、いくつかキャリアチェンジの節目となるポイントがあります。
20代
言うまでもなく、経験を積み実力をつける時期です。博士号の取得や留学を視野に入れるなら医局への入局が一般的です。
30代
専門医を取得するなど一人前の医師としての実力がつく頃。同時に結婚や出産など人生の節目を迎える時期でもあり、キャリアパスを見つめなおす好機でもあります。転職市場でも引く手数多で、年齢が上がると転職が難しくなる外科系では転職に最適の時期だといえます。将来の開業を目指す場合は、市中病院で総合診療を経験する、クリニックの院長を経験する、開業予定地の拠点病院などに勤務して経験や人脈などの土台作りを始める、などが重要になります。この年代での選択はその後のキャリアに大きな影響を与える時期です。
40代
30代に続き、医局を出る、開業するなど大きな決断のとき。家族ができたことや親の介護などの事情から転職を考える人が増える時期でもあります。産業医や製薬会社など、病院以外にも医師としてのスキルや豊富な経験を活かす道はたくさんあり、幅広い選択肢から選ぶことができます。民間病院への転職の際には、医師としての腕のほかに、科やチームをまとめるリーダーシップも評価の対象になります
50代以降
外来だけ、病棟だけのような緩やかな勤務に移行する医師が増える時期です。また、新たな分野にチャレンジするなどの、セカンドキャリアを考える時期でもあります。60代になると、老人保健施設の施設長などに就任する道もあります。更にこれまでの経験を活かして、指導医や、経営携わる立場、といった道もあります。
2-2. 女性医師が注意すべき、結婚・出産の時期とキャリアプラン
女性医師の場合はキャリアプランを考える上で、出産・子育ての時期が大きなポイントになります。 理想としては、研修期間を終え認定医や専門医を取得するまでの7~10年間は男性医師と同様に経験を積み、その後に出産という道筋を辿ることです。その際に重要なのは、まず将来復帰する希望があるのなら、勤務先と今後の働き方の合意を形成しておくこと。それから小さなつながりでもいいので、できる限りこれまでのキャリアが完全に途絶えてしまうのを避けることの2つです。 外科系や救急などは特にですが、専門性が高く進歩の速い医療業界は、数年間のブランクができると復帰へのハードルは上がってしまいます。そこで、例えば子育て中も週に1度は外来を担当するなど、自分の専門分野へ関わりを持ち続けることが重要になってきます。患者からの要請を受けてどの科でも女性医師のニーズは高まっており、大学や民間病院でも女性医師の復帰支援プランを導入しているところが増えています。短時間の勤務をしながら手術や外来の技術を習得できるなど、常勤医への復帰をサポートするプランが用意されていたりするので、これらを活用するのも効果的です。 また、社員の健康管理を主な仕事とする産業医をはじめ、企業での勤務も近年需要が高まっているところです。これらは子育て後のブランクがある女性医師にとっても、人気の転職先となっています。
2-3. 待遇向上だけではない「良い転職」とは
一般的な医師のキャリアプランについて触れてきましたが、「よい転職」とは、自身のキャリアプランを達成する上で必要な条件をクリアするものである必要があるといえるでしょう。その条件の中には、もちろん収入や勤務地をはじめ、勤務形態、専門性をどれほど発揮できるか、何が学べるかなどさまざまな要素が含まれ、これらを実現・獲得できることこそが転職の最大のメリットだといえます。以下に、転職で得られる代表的な利点を紹介します。
異動のない安定した職場による生活満足度の向上
医局と市中病院との一番の違いは、異動のある/なしでしょう。医局は教育システムが充実している、専門医の取得や海外留学のできる環境など数々のメリットはありますが、人事異動でさまざまな関連病院に派遣されることは避けられません。時には1年未満という短いスパンで異動を繰り返すこともあれば、単身赴任にならざるを得ない場合もあり、「家族との時間を多く持つため」は、多くの医師にとって転職の動機となっています。市中病院や産業医は異動のない勤務条件が多いので、通勤時間や月の当直回数などワーク・ライフ・バランスにも考慮して選べば、家族との時間も増え、より満足度の高い生活が期待できます。
将来的な開業を視野に入れて必要となる経験を積める
大学病院は専門分野のスキルを高め、研究を深めるのには適していますが、開業に当たって必要となるような総合診療経験を積むのには向いていません。そこで将来の開業を見据え、雇われ院長としてクリニックに勤務する、市中病院に勤務するなどの道を選ぶ医師もいます。開業医の平均年齢は41歳前後といわれています。40代前半での開業を目指すなら30代後半、40代後半~50代での開業を考えているなら、40代前半には転職しておくことも選択肢のひとつです。
年収や待遇の向上
大学の医局は助教で年収約700万円、准教授で900万円、教授で1000万~1300万円と言われています。一方、民間の病院では500万~600万円前後からスタートして、部科長で1500万円、院長で2000万円が相場。平均で約1200万円前後とされています。産業医は企業によりますが年収約800万~1500万円ほどが目安です。ただし高い専門性が必要な場合や、地方など医師が少ない場所の場合は、目安を大幅に超える高待遇の求人も少なくありません。医師の転職は極端な売り手市場が続いているので、転職エージェント(コンサルタント)などを利用して情報さえしっかり集めれば、収入面で高待遇の勤務先を見つけることはさほど難しくないといえるでしょう。
勤務地
これは最後の点となりますが、転職によって大きく変化しうる条件として勤務地があります。東京を始めとする都市部の病院は、交通の便が良く、最先端の医療に触れられること、大規模病院なら研究会や勉強会などから得られる情報も充実しているなどのメリットが多くある一方で他の転職候補者も多く、総じて医師の供給過多によって勤務医の年収平均安い数字に止まっているなどの特徴もあります。これに対して地方では、一般的に医師の需要が高いため年収が高い、専門分野意外も治療する機会が多いためジェネラリストとしても鍛えられる、豊かな自然が感じられる点などがメリットとなり、逆に交通の便が悪く子どもの教育環境も限られてしまいがちといった点などがデメリットとなります。
2-4. 非常勤(アルバイト)での医師転職について
医師の転職では、常勤医になるのが必ず良いとも限りません。キャリアプランによっては、非常勤医として働く、または常勤医と掛け持ちでアルバイトをするほうが良い場合もあります。医師の働き方には、1週間の勤務時間が32時間以上の「常勤医」と32時間未満の「非常勤医」があり(※1)、非常勤医には決まった曜日・時間に同じ医療機関で勤務する「定期」と、1日単位の臨時で働く「スポット」があります。非常勤医として働くメリットは、柔軟な勤務シフトが可能なことや新しい分野に挑戦しやすいことが挙げられます。一方、デメリットとしては、社会保険など福利厚生の適用がないことや、カンファレンスへの参加が少なくなるため、他の医師と連携が取りづらいことがあります。 ここでは、キャリア形成を考えていく上で、非常勤勤務が役立つ事例をいくつか紹介します。
専門性を高める
「内視鏡など、特定分野の経験を多く積みたい」「専門医の資格を維持するために必要な症例数を確保したい」「様々な環境で新たなノウハウや技術を学びたい」といった場合が挙げられます。診療内容や症例数に焦点を絞って医療機関を選ぶことで、効率的にキャリアアップすることができます。なお、このケースでは、常勤に加えて非常勤として働いている方が多いです。
新しい分野に挑戦する
非常勤求人をうまく活用すれば、転科することなく興味のある新領域に挑戦することができます。例えば、開業に備えてクリニックでの訪問診療を経験したり、「睡眠時無呼吸症候群」といった話題の症例の治療について技術を磨いたりといった場合です。非常勤医の求人は、基本的には即戦力となる人材募集が多いです。しかし、在宅診療や美容外科などの自由診療分野では、研修体制を整えて専門外の医師に広く門戸を開いていることも珍しくありません。
常勤医の勤務にブランクがある
産休・育児休暇からの復帰や体調不良のための療養などでブランクがある場合、いきなり常勤医になるのは不安が大きいですし、条件に合う求人が見つけにくい場合もあります。 そこで、まず非常勤医から始めるというのもひとつの方法です。ブランクがある医師向けに復帰支援プログラムを行っている病院もありますので、内容や取り組み方を検討すると良いでしょう。
時間に制約がある
子育て中や介護中などで時間に制約がある場合は、勤務シフトの自由が利きやすい非常勤医が向いているといえます。最近では、子供が小さいうちは非常勤で働き、ある程度大きくなったら常勤に切り替える男性医師も増えています。
転職予定の病院の内情を知る
常勤医として転職したあとに、「雰囲気が合わなかった」「条件と違った」などが発覚するのは避けたいところです。転職前にまず非常勤医として一定期間働くことは、そんなミスマッチ防止に有効な手段です。
開業資金を稼ぐ
非常勤医の報酬は、およそ時給10,000円が目安です(地域や診療科目による多少の違いはあります)。常勤医の平均収入は年間約1,240万円(※2)ですので、1日8時間、月20日働いたと仮定して時給に換算すれば約6,450円。時給で考えれば、非常勤のほうが効率良く稼げることになります。例えば、週に1日だけ8時間の非常勤勤務を行ったとすれば、年間では約384万円の収入となり、開業資金を貯めるのに十分な助けになります。
開業に備えてコネクションを作る
現在の勤務先と将来の開業予定地が異なる場合は、開業予定地域の基幹病院に非常勤医として勤めることで、その地域の医療関係者とコネクションを作ることができます。地域医療では、在宅医療のバックアップや検査依頼、施設や医師への紹介など、連携が必要となる場面が多くありますので、開業後の医院運営にとって役立つことでしょう。
一般的に「転職といえば常勤医」と考えがちですが、非常勤勤務を組み込むことで、キャリアプランの選択肢は広がります。「専門性を伸ばしたい」「自分に合った勤務先を見つけるためにまずは非常勤で働きたい」といった医師は、近年増えてきているという現状もあります。上記を参考に、有意義な転職活動を展開してみてはいかがでしょうか。
参考リンク
3. 医師転職における専門科目ごとの求人動向
将来を見据えたキャリアプランを考える上では、専門科目ごとの転職市場の動向を知ることも非常に重要です。医師の転職市場における全体の動向を踏まえながら、個別に見ていくことにしましょう。
3-1. 医師転職の全体観
医師の転職市場における全体傾向として注意しておきたい点は、国が増え続ける医療費を抑えるために治療から予防、あるいはリハビリへと医療の力点をシフトしていることがあげられます。さらに一般内科、糖尿病内科、呼吸器内科などは病院、クリニック、介護老人保健施設などさまざまなところで高いニーズがあります。また、高齢者が増えていることから、整形外科も常に一定の需要がある分野です。
全体として、女性患者などのニーズに応えて女性医師の採用を強化する病院が増えたことにより、科目を問わず女性医師の求人が増えていることも最近の傾向です。ほか、外科医は若手の外科医師に限れば常に不足しており、病院の規模にかかわらず求人があり、専門技術を必要とする麻酔科なども求人が多い分野となっています。
ただし、職務の内容としては、専門分野の突出したスキルよりは、外科全般を総合的に診られる人材を求める病院・施設が多め。また高齢化の影響でリハビリテーションの需要も増えています。高齢化社会の進行に伴い、在宅医療を担う医師の求人も急増しています。
このような転職市況の変化を踏まえ、内科系・外科系・その他の科目に分けて、もう少し詳しい状況を紹介します。
3-2. 内科系科目のトレンド
厚生労働省の「医師・歯科医師・薬剤師調査の概況(2014年)」によると、2014年12月31日現在での全国の届出医師数は31万1205人。このうち一般内科医は6万1317人と20.7%を占めており、最も選択者の多い診療科目となっています。転職に際しては他の転職候補者も多いといえますが、その分およそ全国のどこででも必要とされる診療科目であるため、求人数も多いことが特徴です。
期待される役割は、主に生活習慣病の予防・コントロールとがんの早期発見、日々の健康管理などで、市中病院のほか産業医や介護老人保健施設、訪問診療で勤務する道もあります。 当直なしの勤務を条件とする病院も多く、多くの求人から比較して選ぶことができるため、時間や条件に柔軟に働くことも十分に可能です。
このほか内科系では、消化器内科・呼吸器内科・神経内科も常に一定の需要があります。
消化器内科
内科系では一般内科の次に募集人数が多く、医療機関からの求人も多いのが特徴。上部・下部内視鏡検査ができることが募集の条件となっていることが多いです。 専門性を求められる場合とジェネラリストであることを期待されている場合の2通りがあるので、転職の前に確かめておくとよいでしょう。健診・人間ドック施設では胸部や胃部レントゲン、心電図の読影ができる医師が優遇される傾向にあります。
呼吸器内科
急性期から慢性期にかけては全国的に人手が足りておらず、常勤医の需要が特に多い分野です。総合病院では指導医・専門医・後期研修医の求人が多く、比較的小規模の病院では一定以上の経験を持つ中堅の医師が求められる傾向にあります。 特に療養型病院や在宅医療での求人は多く、東京など大都市圏での募集も増加傾向にあります。
神経内科
リハビリテーション病院や在宅医療施設で近年需要が高まっている分野です。中~大規模病院での募集が多く、退院後のケア・リハビリができるなどの専門分野があると転職に有利です。高齢化社会の加速により、ますますニーズの高まりが期待できる分野です。 まとめると、特に一般内科・消化器内科は求職者数・求人数共に多いので、数多い求人情報の中から自分の条件に合ったところを選び出すことが何より重要です。 どれぐらい希望に合った案件を紹介してもらえるかは、転職エージェント(コンサルタント)の力の差が出るところでもあるので、エージェントを判断する際のひとつの目安にもなります。
3-3. 外科系科目のトレンド
あくまで傾向としては若手医師の外科離れが進み、全体的に外科医の数自体が減少傾向にあります。また病院の機能分化と役割分担が進み、中小規模の市中病院では大きな外科手術が行われないことも増えていること、内視鏡手術で治療可能な範囲の拡大などにより、内科医が対応できるケースが増えていることなどから、手術がメインという求人は比較的少なくなっています。消化器外科でも内視鏡検査スキルが歓迎されるなど、病院・医療機関により求められるスキルが変わるので、事前に相手側の条件とこちらの希望をよく確認することが大切です。
一方で近年において急速に需要が高まっているのは、急性期後のリハビリテーションに携わるポジションです。 特に脳卒中患者のリハビリを担当する脳神経外科、気管支喘息、肺炎、COPD、間質性肺炎などの術後をみる呼吸器外科、心血管疾患の術後リハビリを行う循環器外科など、それぞれの専門科の中での需要があります。 勤務先の候補として、都心部に増えているリハビリテーション専門の病院や訪問診療専門の施設など、これまでにはさほど多くは見られなかったものも急激に増えつつあるといえます。
総論としては以上のようなものですが、整形外科、乳腺外科はまた少し違った状況にあります。
整形外科
約1万2300人と外科系の医師の中では最も人数が多い整形外科は、高齢化社会が加速している近年の医師転職市況においてニーズが非常に大きい分野です。 総合病院、リハビリテーション病院、老人保健施設、在宅療養支援診療所などさまざまな場所で働く道があり、常勤・非常勤も比較的自由に選択できます。 診療内容は外科手術や外傷の処置のほか、関節リウマチのリハビリやロコモ対策、老人性疾患のケアまで幅広く、スポーツ関連を除けば主に高齢者を対象としたものが多いです。
乳腺外科
乳がん健診の需要の高まりと共に、大都市を中心に需要が急速に高まっている分野です。特にマンモグラフィー読影認定資格を持つ女性医師のニーズは高く、好条件の求人が揃っています。病院のほか、クリニックや健診・人間ドック施設などで働く道もあります。
3-4. その他の科目のトレンド
眼科、耳鼻咽喉科、皮膚科など、内科・外科に比べれば生命に直結する疾患が少ないその他の科目では、近年希望する医師が増加しています。 ただ市中病院やクリニックの専門科からの求人はあるのですが、小中規模の病院だと担当医師が1~2人というところも珍しくなく、そもそもあまり求人数が多くありません。そのため、競争率は高くなる傾向にあります。
しかし、「市中病院の専門科」以外の選択肢にも目を向けてみると、さまざまなニーズがあることに気づきます。 例えば、皮膚科医なら、褥瘡(じょくそう)や乾燥肌に悩む患者の多い老人介護施設は大きな需要のあるところです。 また、内科の経験があれば訪問診療の場でスキルを活かすこともできるなど、高齢者医療を中心に活躍の場は広がっています。
代表的な科目の動向は以下の通りです。
小児科
小児科医が少ない傾向は続いているものの、少子化で子どもの数も減っていることから求人数は伸びていません。 都市部では小児救急を除けば求人は少なめです。一方、地方の医療機関では高待遇で募集しているところもあります。 女性医師の一層の活躍が期待されている分野であり、子育て中でも勤務しやすい非常勤シフトの枠も多くなっています。
産婦人科
医療訴訟への警戒などから産婦人科医はなり手が減っており、少子化といわれる現代でも特に若手の医師が不足している分野です。 大規模病院、中・小規模病院、専門の民間クリニックでの求人募集があります。手術に対応できる常勤医師のニーズが高まっています。選択肢としては、不妊治療の専門施設で働くという道もあります。
麻酔科
医療のQOLを重視する医療機関の増加により、麻酔科の医師はニーズが高まっている分野です。アルバイトよりも一定の経験のある常勤医を求める傾向が強く、常勤でも当直なしなど、ワーク・ライフ・バランスを考えやすい勤務条件での求人が増えています。出産・育児などでブランクのある女性医師の復職を支援する制度を持つ病院も増えており、病院のほか老人保健施設や美容医療関連施設の求人もあります。
3-5. 医師の年収に関するトレンド
医師の年収については、厚生労働省が毎年実施している「賃金構造基本統計調査」の中で、全国と都道府県別それぞれの平均賃金が公開されています。2016年の調査結果によると、医師の全国平均年収は約1,240万円、平均年齢は41.8歳でした。
ただし、これは研修医もベテラン医もすべて合わせた平均値です。実際の年収は、経験年数や勤務先の形態(民間病院か公立病院か)、施設の規模、勤務地、診療科目などによって変わってきます。
研修医の平均年収は300~400万円が目安とされ、研修修了後も経験の浅いうちは、大学病院の場合で年収300~600万円程度、市中病院に進んだ場合は600~800万円程度であるのが一般的です。また、その後も市中病院と大学病院では市中病院が高額報酬を得られる傾向にあります。 一概にはいえませんが、大学病院では講師・助教授クラスで年収700~800万円台が多いのに対し、市中病院では5~10年前後の経験を持つ医師なら、年収1,000万円を超えることも珍しくありません。
さらに、病院の規模が大きくなるほど年収は下がる傾向が見られます。先の調査結果によれば、職員数1,000人以上の大病院に勤務する医師の平均年収は約1,024万円(平均年齢37.7歳)なのに対し、10~99人の小規模病院に勤務する医師の平均年収は約1,651万円(平均年齢52.7歳)となっています。このような結果は、若いうちに大学病院や総合病院で研鑽を積んだあと、市中病院に出る医師が多いためだと考えられます。
こうした傾向に加え、医師不足が深刻な地方では都心部より平均年収が高いなど、地域による年収差も見られます。また、診療科目でも高齢者向けの需要が高い整形外科や在宅医療関連の科目で、年収提示額の高い求人が多い傾向にあります。
過去10年間、年度別の平均年収額は変わらず
次に、年収額の移り変わりについて最近の傾向を見ていきましょう。「賃金構造基本統計調査」の結果を見ると、2015年時点で医師の年収の全国平均は約1,098万円(平均年齢40.0歳)ですが、2012年は約1,144万円(平均年齢41.2歳)、2007年だと約1,104万円(平均年齢40.0歳)となっています。長いスパンで見れば年によって多少の変化はありつつも、ほぼ横ばいの状態です。過去10年間は消費者物価指数にも大きな変化は見られないので、ここ10年間は医師の年収平均に大きな変化はないといえるでしょう。
厚生労働省が2年ごとに実施する「医師・歯科医師・薬剤師調査」によると、2000年以降、医師の数自体は2.6~3.2%台で増加しています。それでも年収に変化が見られないのは、超高齢化社会の進展に伴って医師が必要とされており、国の方針にも大きな変化がなかったためだと考えられます。医師の年収は「市場の需要と供給のバランス」「病院の収入に直結する診療報酬の内容(行政の方針)」の2つの影響を受けます。このうち、どちらかが変われば風向きは変わる可能性があるのです。
高収入の求人が多い高齢者医療関連科目
今後の傾向としてほぼ確実といえるのは、団塊の世代が75歳以上となる2025年前後に向けて、在宅診療や整形外科、リハビリテーション、高齢者に重点を置いた「老年内科」など、高齢者医療と密接な関係がある科目の需要が高まっていくことです。現在もこの傾向は顕著ですが、今後しばらくは同じ傾向が続くと思われます。また、現在は全国的に医師不足が続いています。厚生労働省の推計によると、医師の需給バランスは早ければ2024年頃、遅くとも2032年頃には均衡する見込みとなっています。そうなると、早ければ数年後、遅くとも10数年後には医師の給与や転職市場にも影響が出てくると考えられます。
このように、医師の年収は平均値だけでは傾向をとらえることが非常に困難です。 そのため、転職における収入の優先度が高い方は、行政の方針と転職市場の需給トレンドに注意してキャリア形成を検討することが重要といえるでしょう。
4. 医師転職におけるエリア・施設規模ごとの動向
ここでは厚生労働省調査の調査データを元にエリア・施設規模ごとの動向を解説いたします。
4-1. 必要とされる医師像とは?都道府県別の医師の求人理由と必要医師数
「求人理由」や「科目別必要医師数」の全国平均は?
地方ごとの特色を知るには、最初に比較対象となる全国平均を知っておく必要があります。
厚生労働省の「必要医師数実態調査」(2010年6月)によると、医師の「求人理由」の全国平均1位は「今いる医師の数に対して患者が多い」で27.8%。2位は「退職医師の補充」で17.5%、3位は「今いる医師の日直・宿直などの負担軽減」で16.2%という結果でした。
また、診療科目ごと・病床規模ごとの必要医師数をまとめた「病床規模別・診療科目別必要医師数」で、必要とされる医師の診療科目を見ると、全国で必要とされる医師24,033人中、需要の多い診療科目1位は3,976人の内科(16.5%)、2位は1,963人の整形外科(8.2%)となっており、以下、麻酔科、小児科、外科、産婦人科、精神科が、それぞれ5~6%前後で続いています。医師を必要としている病院の規模としては、病床数100~199床が最も多いのですが、科によってばらつきが見られます。
「勤務形態別に見た必要医師数」によると、全国で必要とされる医師24,033人中、フルタイム勤務が21,588人(89.8%)、短時間勤務が817人(3.4%)、非常勤が1,628人(6.8%)と、圧倒的にフルタイム勤務の医師需要が高くなっています。
なお、医療施設に勤務する人口10万人対医師数の全国平均は233.6人で、最も多い京都府(307.9人)は最も少ない埼玉県(152.8人)の2倍近くになっていることも押さえておきましょう(厚生労働省「平成26年(2014年)医師・歯科医師・薬剤師調査の概況」)。
データに見る地域ごとの特色
先にご紹介したデータを踏まえ都道府県別のデータを見ると、それぞれの地方で求められる医師の姿が少しずつ浮かび上がってきます。ここでは、大都市代表の「東京都」と、大都市近郊であり広い郊外地域も持つ地域の例として「千葉県」、そして地方都市の例として「秋田県」をピックアップして比べてみました。
- 東京都:人口ランキング1位(約1,360万人)/面積ランキング45位
- 千葉県:人口ランキング6位(約620万人)/面積ランキング28位
- 秋田県:人口ランキング38位(約100万人)/面積ランキング6位
- ※2017年1月現在
東京都
医師の求人理由では、「救急医療への対応」が18.8%で第3位となっているのが特徴です。人口10万人あたりの医療施設に勤務する医師数は304.5人と京都府に次いで多い数値となっていますが、現役の医師数20,161.1人に対して1,656.3人の医師が必要とされており、飽和状態になっているわけではありません。
なお、他府県に比べて非常勤での求人率が高めで(11.4%)、感染症内科やリウマチ科、アレルギー科、放射線科、リハビリ科といった科目の求人もそろっており、子育て中などでフルタイム以外の働き方を望む医師や専門技術を活かしたいと望む医師にとって、働きやすい地域だといえそうです。 また、病床500以上の大規模院の求人が多いので、大病院で経験を積みたいと望む医師にも向いているといえます。
千葉県
医師の求人理由は、ほぼ全国平均に近い数字です。人口10万人あたりの医療施設に勤務する医師数は182.9人と少なめですが、現役の医師数6,812.2人に対して必要な医師は803.8人であり、特別募集が多いわけではありません。科目別求人では小児科の割合がやや高く(7.2%)、産婦人科も高めとなっており(6.9%)、子供関連科目に需要がありそうです。病床規模としては、100~199床、200~299床、500床以上とさまざまな求人が満遍なく出ており、幅広い医師を募集していることが見えてきます。
秋田県
医師の求人理由では、「退職医師の補填」が26.9%、「外部機関からの派遣等から医師確保」が12.8%となっており、地域医療を担う医師が求められていることがわかります。人口10万人あたりの医療施設に勤務する医師数は216.3人で全国ランキングは32位。現役の医師数1,482.6人に対して302.9人の医師が必要とされており、医師不足を補うために常に募集している状態だと思われます。科目別では、全国では1.8%ほどの皮膚科の需要が全体の5%を占めており、高齢者医療に対応した医師が歓迎されそうです。病院規模は100~199床と500床以上が多く、各市の拠点病院クラスと中心市の基幹病院双方に需要があるようです。
4-2. 医師の転職後の待遇に大差?病院規模別の給与や労働時間の差
医師が転職を考える上で、給与は1、2を争う重要なポイントです。たとえ同じような経歴、技術を持った医師でも、勤める病院の規模や場所次第で、年収にして数百万円の差が出ることも珍しくありません。そこで、さまざまな職種や勤務先の規模ごとの年収を調べた厚生労働省「賃金構造基本統計調査」 (2017年2月22日公表)から見えてくる、勤務先と給与額の関係を紹介したいと思います。
小規模病院ほど給与が高い!
調査は、企業規模別(10~99人、100~999人、1,000人以上)に、それぞれについて平均年齢や勤続年数、実労働時間などを調べたもので、男女別でデータが公表されています。医師の場合、勤務先の規模が10~99人(100床以下の地域病院)、100~999人(数百床クラスの中小病院・地域の基幹病院)、1,000人以上(大学病院や都道府県の基幹病院)に相当すると考えてください。
男性医師・女性医師ともに、1,000人以上の規模の給与額が最も低く、企業規模が小さくなると給与も上がっていることがわかります。これは、平均年齢の違いからもわかるとおり、若いころは大学病院など大きな病院で技術を磨き、のちにその技術を活かして、中小病院や地域の病院に移る医師が多いことが一番の理由でしょう。超過実労働時間数でも1,000人以上の規模がある勤務先が最も多くなっており、当直の有無や回数など、病院の規模によって働き方にも違いがあることが推測されます。
また、男女間で月額給与に数万~数十万円の差が出ているのは、一般企業と同様、出産・育児により一時的にキャリアを中断した影響や、管理職や重要なポストに就く女性医師が男性医師に比べてまだまだ少ないためと考えられます。
病院規模別の待遇の違い:男性医師
横スクロールでご確認いただけます
年齢 | 勤続年数 | 所定内 実労働時間数 |
超過 実労働時間数 |
現金給与額 (月額) |
賞与・その他特別給与額 (年額) |
|
---|---|---|---|---|---|---|
全体の平均 | 43.0歳 | 5.8年 | 164時間 | 14時間 | 100万3,100円 | 97万200円 |
10~99人 | 53.6歳 | 8.2年 | 167時間 | 2時間 | 139万7,000円 | 62万6,000円 |
100~999人 | 47.3歳 | 6.5年 | 164時間 | 11時間 | 123万700円 | 95万8,200円 |
1,000人以上 | 38.6歳 | 5.0年 | 163時間 | 18時間 | 79万7,000円 | 102万9,400円 |
病院規模別の待遇の違い:女性医師
横スクロールでご確認いただけます
年齢 | 勤続年数 | 所定内 実労働時間数 |
超過 実労働時間数 |
現金給与額 (月額) |
賞与・その他特別給与額 (年額) |
|
---|---|---|---|---|---|---|
全体の平均 | 38.3歳 | 5.5年 | 161時間 | 11時間 | 83万400円 | 85万600円 |
10~99人 | 48.9歳 | 8.6年 | 157時間 | 1時間 | 103万2,600円 | 52万7,900円 |
100~999人 | 43.1歳 | 6.6年 | 161時間 | 6時間 | 101万8,000円 | 83万5,700円 |
1,000人以上 | 35.6歳 | 4.6年 | 162時間 | 14時間 | 71万500円 | 88万6,700円 |
- ※厚生労働省「賃金構造基本統計調査」 (2017年2月22日公表)から引用
男性医師・女性医師ともに、1,000人以上の規模の給与額が最も低く、企業規模が小さくなると給与も上がっていることがわかります。これは、平均年齢の違いからもわかるとおり、若いころは大学病院など大きな病院で技術を磨き、のちにその技術を活かして、中小病院や地域の病院に移る医師が多いことが一番の理由でしょう。超過実労働時間数でも1,000人以上の規模がある勤務先が最も多くなっており、当直の有無や回数など、病院の規模によって働き方にも違いがあることが推測されます。
また、男女間で月額給与に数万~数十万円の差が出ているのは、一般企業と同様、出産・育児により一時的にキャリアを中断した影響や、管理職や重要なポストに就く女性医師が男性医師に比べてまだまだ少ないためと考えられます。
給与以外のメリット・デメリットの違いにも注目
ここで参考までに、開業医の収入についても紹介しておきましょう。厚生労働省が公表している「第20回医療経済実態調査」(2015年に実施)によると、入院施設を持たない個人診療所の年間利益(収益ー費用)の平均は、2,611万5,000円でした。もっとも、これは平均値なので、完全自由診療の美容整形などでは、さらに高い報酬を得ていると思われます。
そう聞くと「転職や開業もいいかな」と思えてきますが、ただ転職・開業にかかわらず、給与や報酬額では表せない要素はたくさん存在します。例えば、開業医となれば医師としての仕事に加えて、スタッフをまとめたり集客戦略を練ったりするなど、経営者としての仕事もしなければいけません。それをおもしろいと思える人にはぴったりですが、医療だけに集中したい人には、重荷になることもあるでしょう。
また、病院に勤務するにしても、都市部の大病院は、最新医療の学びの機会が多く「専門分野の技術を高めやすい」特徴がありますし、地方にある中小の病院は、休みがきっちり確保できるため「家族との時間を取りやすい」「地域医療に携わることができる」「将来の開業に備えて総合診療的な技術を磨ける」など、病院の規模や場所次第で、得られるものには大きな違いがあります。
参考リンク
- 厚生労働省「必要医師数実態調査」(2010年6月)
- 厚生労働省「賃金構造基本統計調査」 (2017年2月22日公表)
- 厚生労働省「第20回医療経済実態調査」(2015年に実施)
5. 医師転職における求人情報の探し方
これまでご紹介してきたように、転職を成功させるためには転職の動機の明確化に始まり、キャリアの方向性の決定、情報の入手、実際の職場環境の確認、条件交渉……と検討しなければいけないこと、決断・実行しなければいけないことがたくさんあります。
しかし、忙しい毎日の中で、実際にこれらすべてを1人でこなすことは無理がありますし非効率的でもあります。そこで具体的な転職活動の方法としては、転職エージェント(コンサルタント)を利用することも選択肢の一つです。
転職エージェント(コンサルタント)のサービスとは、求人の提案・キャリア相談・条件交渉・面接フォローなどが一体化したもの。エージェントは医療機関から成功報酬をもらうビジネススタイルなので、医師側はすべて無料で利用できます。
5-1. 転職エージェント(コンサルタント)が好まれる理由
転職エージェント(コンサルタント)を利用する第一のメリットは、余計なトラブルを避けられることです。かつては医師の転職といえば、同期や先輩・後輩など人づてに紹介を頼むのが一般的でした。これは今でも有効な方法ではありますし、希望や強みをわかっている人であればぴったりの案件を紹介してくれる可能性もあるのですが、問題がないわけではありません。
言わば人の口に戸は立てられませんから、転職活動中だということを周りの人に知られる可能性が非常に高くなります。周りも承知の上で転職活動を行っているなら問題ないのですが、医局には秘密で転職先を探したい場合などは、周りに知られたことにより現在の職場にいづらくなってしまう場合もあるでしょう。また紹介された先が希望の条件と違っていた場合、断ることでその紹介者との関係が悪化することも考えられます。
広い人脈を持っている人に依頼できるなどの環境がある場合は別ですが、そうでない限りは、取捨選択のしやすい転職エージェント(コンサルタント)を使うことが一般的です。
5-2. 転職エージェント(コンサルタント)の選び方
求人案件の数が豊富で詳しい情報が手に入ること、選任のアドバイザーがキャリアの相談に応じてくれることなども、医師が転職エージェント(コンサルタント)を利用する場合の大きなメリットです。
ただし一口に「転職エージェント(コンサルタント)」といっても、会社ごとに案件数やサービス、得意分野にはばらつきがあり、どこを選んでも同じというわけではありません。転職に関する多くの要素を任せるだけに、エージェント選びは転職の結果にも直結します。まずはエージェントに問い合わせして、担当のコンサルタントが信頼できる人物かどうかを見極めることが必要です。担当者が親身になってくれるかなどは、転職エージェント(コンサルタント)を選ぶ上で一つの指標になります。
5-3. 転職エージェント(コンサルタント)によって異なるサービスの一例
医師転職のエージェントによってサービスが異なる例をいくつか紹介します。
どれほど親身になってくれるか
医師の転職成功には、キャリア全体を見据えて「何のために転職するのか」を明確にすることが欠かせません。御用聞きのように、ただ医師が出したオーダーに合った求人情報を提案するエージェントも多いですが、最初にしっかり面談を行い、転職の動機をしっかり見極めた上で、オーダーの妥当性から検証してくれるエージェントがよいです。この一回の転職だけでなく、「今後の目標にあっているか?」という観点から、一緒に考えてくれるところだと安心です。
転職後のフォロー体制
転職後、新しい職場で困ったことが起きたときに相談できるか否かも、エージェントにより差が出るところです。「転職活動が終わったらそれまで」というところもありますが、1年もの長いスパンで連絡を取りながらフォローしてくれるところもあります。
医療機関への働きかけができる
医療機関との結びつきが強いエージェントだと、条件交渉の際に融通の効く範囲が広がります。また転職後のフォローとも関連しますが、例えば転職後に「病院のスタッフが足りず、やりたいことが十分できない」という悩みがある場合、相談を受けた転職エージェント(コンサルタント)から医療機関にスタッフ増員の提案を行ってもらえるなどの、きめ細やかなフォローを受けることもできます。
6. 医師転職の段取りと進め方
実際に転職活動を進めていく上では、段階ごとに失敗しやすい箇所や気をつけたいポイントが存在します。転職完了まで全体の流れとそれぞれの段階で必要な活動内容を、タイムテーブルに沿って紹介します。
6-1. 退職希望日の1年~半年前
一般的に転職の準備期間は、退職希望日から逆算して3~6カ月といわれています。ただし、それは実際に活動する期間の話です。転職後のキャリアプランを考えたり、円満退職のための下準備をしたりということは、1年前から始めても早すぎるということはありません。 この時期の活動内容としては以下の点があげられます。
- 「なぜ転職したいのか」を突き詰めて、新しい勤務先に求める条件を明確にする
- 家族の了承を得る
- 退職に関する情報を集める・退職の意志を伝える
順を追って説明していきましょう。
01. 「なぜ転職したいのか」を突き詰めて、新しい勤務先に求める条件を明確にする
転職活動の指針となる存在なので、将来のキャリアプランを見据えた上でしっかり考える必要があります。将来の方向性によっては転職しないことがベストな場合もありますから、ここが曖昧なままだと、結果として「転職したものの何か違う……」ということにもなりかねません。じっくり時間をかけて考えるのがおすすめです。
02. 家族の了承を得る
転職により最も大きな影響を受けるのは、一番身近にいる家族の方々です。この家族が転職を了承して応援してくれるか否かは、転職活動の成否に多大な影響を与えますし、今後のライフプランにも直結します。転職活動を本格化させる前に話し合い、理解を得ておくことは絶対に必要です。
03. 退職に関する情報を集める・退職の意志を伝える
大半の医師は現職場の上司に退職の意志を伝え、退職時期を確定させてから転職活動を始めています。特に医局で顕著ですが、来年度の人事が固まった後に退職を切り出してしまうと強い引き止めに合う場合もあるので、過去に退職した先輩たちの例も参考にしながら、早めに話をしておいた方がよいでしょう。
医局・病院を問わず医師は年度末での契約更新が多いため、退職時期は年度末に集中する傾向があります。その約半年前に当たる9~10月頃は求人の多い時期でもあるので、退職についての話し合いはその前に終らせ、夏前から本格的な活動に移れるようにしておくと安心です。
6-2. 退職希望日の半年~1カ月前
情報を検索したり面接に行ったりと、実際に転職活動を行う時期です。転職エージェント(コンサルタント)を利用することでかなりの部分の手間を省くことができますが、エージェント選びなど、重要なところにはしっかり時間をかける姿勢が大切になります。この時期の主な活動内容としては、次の3つのフェーズが挙げられます。
- 求人情報の収集/選定
- 履歴書の作成・応募
- 面接・病院見学・待遇交渉
01. 求人情報の収集/選定
実際の転職活動は、既に考えている「転職を希望する理由」に沿って求人情報を収集するところから始まります。具体的には、転職エージェント(コンサルタント)に登録し、担当コンサルタントと面談して希望の条件を伝えます。面談の際には、医師のなりすまし防止を進める国の方針で、身分証の確認を求められるのが一般的です。面談のあと、希望に合った求人の紹介が届くので比較・検討していくことになります。エージェントを利用することで、次のような成果が期待できます。
- 面接のセッティング、勤務条件交渉を行ってくれる
- 現在の勤務先に転職していることを知られたくない場合も配慮してくれる
- 個人では困難な、「複数の医療機関の比較」をしてくれる
- 非公開求人を含む、豊富な求人情報の中から紹介が受けられる
- 求人票の情報だけではわかりにくい医療機関の雰囲気や実情を知ることができる
- 長期的なキャリア設計を見据えた相談が可能で、転職後も悩みの相談や勤務先との交渉などのフォローをしてくれる
ただし内容は会社によってさまざまなので、サービスの充実具合も、転職エージェント(コンサルタント)を選ぶ1つの目安になるでしょう。 ここは時間を惜しまず、信頼できるエージェント・担当者を選んでください。
02. 履歴書の作成・応募
希望に沿った応募先が見つかったら、履歴書の作成と応募の段階に進みます。 多くのエージェントでは、面接の日程調整はもちろん履歴書の作成支援のほか想定される面接の内容、面接官の情報などを教えてくれますし、面接前にもう少し譲歩してほしい条件があれば、細かい条件交渉も行ってくれます。
03. 面接・病院見学・待遇交渉
面接はお互いの相性を知るお見合いのようなもの。医療機関ごとに運営方針(将来性)やスタイルが異なるので、それぞれに合わせた準備をして望むことが大切です。志望動機や前職の退職理由、これまでの実績、自身の性格などは必ず聞かれるところなので、少なくともこれらについては前もって考えておきましょう。転職エージェント(コンサルタント)は医療機関側の要望も把握しているので、効果的な自己PRの方法を教えてもらうのにも役立ちます。
また、「面接ではスキルやキャリアだけが見られているわけではない」ことにも注意したいところです。もちろん、スキルやキャリアはあるに越したことはありませんが、ほとんどの医療機関では、医師が思う以上に「患者さんや周りのスタッフと普通にコミュニケーションがとれる人かどうか」を重視しています。質問の内容だけでなく身だしなみや最初のあいさつ、言葉遣い、態度、履歴書の書き方など一般的なマナーも評価の対象になるので、これらも気を配ってみるとよいでしょう。
一方、面接は自分がチェックされるばかりではなく、相手の情報を自分の目や耳で確認できるチャンスでもあります。こちらからの質問では待遇面だけでなく、診療方針などについても施設の代表者に直接質問をぶつけてみるといいでしょう。エージェントを通じてだと確認しにくい部分でもあるので、直接聞くことでミスマッチを防ぐことにもつながります。面接の結果、双方の希望が一致すれば内定を前提とした病院見学や最後の条件交渉が行われ、内定へと進みます。病院見学は、面接の日程とセットになっていることも多いです。
6-3. 退職希望日の3~1カ月前
このフェーズで行うことは、主に現職場での退職手続きです。先に退職を決めてから転職活動をすることもできますが、転職先が決まってから退職届を出すことで心配事を少なくできます。また、そもそも医師の退職は後任の選定や引継ぎに時間がかかるのが常であり、退職希望日までの日があまりに短いと退職手続きの難航が予想されるので、それを見越した上で勤務開始日を設定しておくと安心です。この時期の活動の内容としては、主に以下の2つがあります。
- 現職場に退職の意思を伝える・退職の交渉を行う
- 引継ぎを行う
01. 現職場に退職の意思を伝える・退職の交渉を行う
退職を切り出すタイミングは人事が固まる前がベストで、まず直属の上司に話すのがセオリーです。逆に避けたいことは、人事が固まった直後に話してしまったり、噂が広まって自身で話す前に上司の耳に入ってしまったりすることで、こうなるとまとまるものもまとまらなくなってしまいます。特に医局の場合は注意が必要です。
退職の理由は、スキルアップなどの理由を正直に話すのがよい場合もありますが、強い慰留が予想される場合には「親の介護のため」「家族の健康上の理由のため」「実家のクリニックを継がなければいけなくなったため」など他人が否定しづらい個人の理由を使う手もあります。
02. 引継ぎを行う
転職活動をしながら資料の整理などを少しずつ進めていくとスムーズです。「引継ぎが完了すれば退職」ではなく、「退職日までにベストな引継ぎをすること」を目標に進めると、自分主導で進めることができます。
7. 医師転職の成功・失敗事例
医師の転職事情について一通りの流れや注意したいポイントを紹介してきました。一連の流れを通して、転職のイメージが何となく湧いてきたのではないでしょうか。 最後に、実際の転職における成功/失敗事例をいくつか紹介しますので、こちらも参考になさってください。
7-1. 成功事例
01. S医師 30代後半・男性・形成外科医(皮膚形成の専門)
海が大好きなことから「日常的に海を感じられる立地」で「皮膚形成の専門性を活かせる病院」への転職を希望。だが早々に、通勤エリア内の形成外科を標榜する病院はすべて海から遠いという現実の壁にぶつかった。しかし「海は譲れない!」という強い意志は揺るがず、それを見た転職エージェント(コンサルタント)が出した、「逆にエリア内の海に近い病院で、形成外科を必要としているところはないだろうか?」という発想から、形成外科を新設してくれそうな病院を探すことに切り替えた。
データの洗い出しから足を使った情報収集まで徹底したリサーチを行い、遂に自治体が運営するM病院を見つける。科目の新設に必要な議会承認を得るため、S医師とコンサルタントの2人で直接院長にも掛け合い、その院長の尽力で議会承認も下りて形成外科の新設が決定。当初の2つの条件を完全に満たす病院への転職に成功した。M病院は地域の基幹病院。病棟・外来に加えて救急の受け入れも多く、S医師もメスを握らない日はないほど。「天気がよければ毎日のように海を見に行きます。忙しい毎日だけど、この海を見ていると日常の雑多なことが小さなことに思えてくるんです」と心身共に充実した日々を送っている。
02. K医師、30代後半・男性・放射線科の専門医(読影のスペシャリスト)
「歳を重ねて読影が困難になったらどうするか」という将来への不安と「地域医療への貢献を感じられる職場を医師としての終着点にしたい」との思いから専門分野からの転身を決意。
まず「放射線読影の専門性を発揮できること」「地域医療に貢献できること」の2つを軸に、転職エージェント(コンサルタント)のコンサルタントが案件探しを開始した。K医師が通常は患者と話すことのない放射線読影医師でありながら患者とのコミュニケーションに抵抗がないことや過去のアルバイト経験などを踏まえ、キャリアプランを考えて、在宅医療も手がける内科系のD病院への転職を提案し、転職が決まった。
「この病院で、自らが主治医となり患者さんを病院でなく自宅で看取るという状況を初めて経験しました。患者さんを直接診ることなく画像だけ見てきたこれまでと違い、今は訪問診療という現場で、医者という職業の尊さを改めて感じている毎日です」 とK医師。今の仕事にやりがいを感じている。
03. Y医師 40代前半・男性・麻酔科の専門医
夫婦共に麻酔科の専門医で別々の病院に勤務していた。夫婦で夫人の実家であるF病院を継ぐことになり、中小病院であるF病院の診療面でのバランスを考えて、転科を決意。転職エージェント(コンサルタント)に相談し、調査の結果将来的に整形外科を作るべきとの経営判断から、整形外科の臨床研修ができる病院への転職を希望した。
「40代で臨床研修先を探す」という難題だったが、コンサルタントはY医師の麻酔科医としての需要に注目し「麻酔科医を必要としている病院」の中からK病院を見つけ交渉を開始。週2日は麻酔科医として手術に立ち合い、2日は整形外科の専門医と一緒に外来・病棟を診る、残りの時間で若い研修医の外科的分野の指導を行うことでまとまり転職に成功。双方がWIN-WINとなる好環境が実現した。
7-2. 失敗事例
01. 男性・外科経験もある内科医
家庭の事情から10年は勤務を続けられる転職先を希望。優先順位としては、まず続けられることが一番で、そのためなら給料ダウンもやむを得ないと考えており、相談を受けた転職エージェント(コンサルタント)もその条件に合う求人を探していた。しかし、つてで見つけた「身体への負担が大きいが収入が高い仕事」を選択。業務量の多さに体力が追いつかず、わずかな期間で退職してしまった。優先順位がぐらついてしまったことが失敗の原因となった。
03. 男性・消化器内科医
医局からの転職で「ワーク・ライフ・バランスの充実」と「内視鏡検査・手術がある程度できること」の2つを条件に転職先を探していた。知名度も高いある病院が公表している内視鏡検査・手術件数から、「これだけ件数が多い病院ならスキルをいかせるだろう」と考えて応募。採用となったが、医師1人あたりの件数では内視鏡検査・手術件数は多いとはいえず、スキルを活かせないことに不満を感じている。病院のネームバリューや目先の件数につられてしまい、実情をよく確認しなかったことが失敗の原因。「自分が行って何ができるのか」を考えるステップを省いてしまった。
8. 総括:医師が転職で失敗しないために
転職は人生における一大イベントです。いい家を買おうと思ったら、施工会社やハウスメーカーの見積もりやサービスをしっかり検証するように、いい転職をするためには、待遇や病院の知名度で安易に決めてしまわずによくよく検証することが大切です。例えば「年収2千万円」という魅力的な条件の提示があったとしても、どうしてその数字になるのか?数字の根拠や求められている成果は何なのか?といった病院側の意図を確認し、納得できなければ避けるべきです。「転職は人生における大きな買い物と同じ」という視点で、ぜひ転職で成功を勝ち取りましょう。